2024/05/24春の読書会報告

第17回春のオンライン54ら読書会                       2024.5.24

【参加者】

篠原泰司(一文)、宮田晶子(政経)、石河久美子(一文)、鈴木伸治(商)、首藤典子(一文)、沖宏志(理工)、露木肇子(法)、加藤透(理工)、斎藤悟(社学)、前田由紀(一文)

(以上10名、敬称略)

二十四節気によると、この季節は「小満」。「草木が繁って天地に満ち始める」意とか。すがすがしい季節となった。しかし、ロシアのウクライナ侵攻、イスラエルのガザ侵攻が重なり、即時停戦が切に望まれる状況にある。戦没者を悼む「ゴジラ-1.0」、クラッシック・オペラ音楽、愛子さまブーム、米大統領選、新NISA、経済小説巨匠の自叙伝、失われた30年日本経済の低迷、「虎に翼」憲法24条秘話、7,80年代人気作品の再読、ヨーロッパにおける難民状況、「光る君へ」平安文学と今回も参加者の関心事がいろんな方角を向いていて、実に壮観であった。参加者からの紹介文を掲載する。(発表順、文体は常体に統一)

なお、これまでの 読書会報告集Book List、もご覧いただけます。

〇篠原泰司(一文)

「デューン 砂の惑星PART Ⅱ」2024年3月劇場公開

待ちに待ったドゥニ・ヴィルヌーブ監督の手になるデューン砂の惑星の2作目。デヴィッド・リンチ監督の映像よりも心理劇や政治劇の方にバイアスがかかった印象がある。その分主人公たちの超人(超能力者)ぶりはかなり抑えられていて、特にアリア(主人公ポール・アトレイデスの妹)がはっきりと登場させられていなかったのは残念だった。昔からの砂の惑星ファンとしては物足りなさが残る。しかし、このことは次回への伏線としては何か強烈な意味をもっているのかもしれない。次作PART Ⅲに期待。

「ソウルメイト」 2024年2月劇場公開

韓国の女優チョン・ソニをドラマ「ボーイフレンド」から注目していて、今回イ・ダミ(梨泰院クラスで有名)との共演ということで期待して見に行ったが、期待に違わず予想以上に良い映画だった。2021年の香港映画「ソウルメイト/七月(チーユエ)と安生(アンシェン)」のリメイクだが、小説家から画家へと設定が変更されており、また物語の舞台の中心になった済州島の映像の美しさも特筆もの。鉛筆による極細密な巨大肖像画と済州島の四季の映像に注目。

「ゴジラ-1.0」 2023年11月劇場公開

観てわかったことだが、この映画は1954年のゴジラ第一作目の正統なリメイク作品だ。だから、ここに登場するゴジラは太平洋戦争で海に消えた戦死者の魂の集合体ということになる。主人公の名前を敷島にしたことは大和(日本)にかかる枕詞からであるはずであり、映画の最後の方で海中に没するゴジラに向かって総員で敬礼するシーンはゴジラ=戦死者の主題を示していると考えるのは誤りではないはずだと思った。

『〈死〉からはじまるクラシック音楽入門』樫辺勒、日本実業出版社 

書店で手にした瞬間「これは買いだ」と思った本。「死」という角度から見たクラシック音楽が今まで知りえなかった情報につながっていく快楽。音楽史の本としても「死」の音楽のガイドブックとしても、たぶん生涯役に立つだろう。

〇宮田晶子(政経)

『赤と青のガウン』彬子女王、PHP文庫

愛子さまが留学・進学せずに就職されたのは話題になったが、皇族の皆様の留学って単なる箔付け?と思ったところで、この三笠宮家の彬子女王のオックスフォード留学記が目に留まった。女性皇族として初の博士号を取得された方だが、まずオックスフォードの大学院に入学許可を得るのも大変だし、研究でも色々な苦難があったようだ。滞在中、プリンセスとしてではなく、一大学院生として様々なことに取り組まれているのがとても好感が持てた。時系列ではなく、色々なエピソードごとの章立てになっているが、それぞれちゃんとオチもついていたりして面白い。またそれぞれの章のタイトルがマッチした四字熟語となっているのも洒落っ気が感じられた。

【まだ読んでないけど、興味を持っている本】

『人新世の「資本論」』斎藤幸平、集英社新書

21年の新書大賞を取り、話題の書であることは知っていたが、手に取る機会がなかった。注目したのは、Harvard Business Reviewのテーマ書評でその英訳書Slow Downが取り上げていたこと。この欄で日本人著者の本が紹介されることはなかったので、ブームには乗り遅れたが、読んでみようと思う。

【まだ観てないけど、興味を持っている映画】

「関心領域」ジョナサン・グレイザー監督・脚本

ちょうど54ら読書会の当日に封切られた映画。ホロコーストが行われていたアウシュビッツ強制収容所の「隣」で平和に幸せに暮らす収容所所長一家の話。収容所の映像は一切出てこないとのことだが、音や建物から上がる煙や気配からその存在は伝わってくるらしい。暇がなくて6/1現在、まだ映画館に足を運べていないが、評判は良いみたい。

〇石河久美子(一文)

『壁の向こうの住人たちーアメリカの右派を覆う怒りと嘆き』Strangers in their own land

A.R.ホックシールド、岩波書店 

トランプを支持する人たちはどういう人たちなのか。著者は、アメリカでも有数のリベラルで知的な地域バークレイのカリフォルニア大学の社会学者。真逆ともいえる共和党の牙城の南部ルイジアナ州で聞き取り調査を行う。明らかになってきたのは、古き良きアメリカの規範を重んじて、真面目に生きてきたのにアメリカンドリームに到達できなかった白人中間層の実態。黒人、移民、LGBTなどマイノリテイの人たちには優遇措置があるのに、自分たちは顧みられてないという不満を抱えている。そういった人たちの心情にぴったり寄り添ったトランプを、著者は「感情に訴える候補者」と表現している。11月の大統領選を注視する上でも参考になる書。

〇鈴木伸治(商)

『2030年:すべてが「加速」する世界に備えよ』ピーター・ディアマンディス、スティーブン・コトラー共著、土方奈美訳、NewsPicksパブリッシング(2020年12月24日)

著者のピーター・ディアマンディスは、Xプライズ財団CEO。シンギュラリティ大学創設者、ベンチャーキャピタリスト。連続起業家としては寿命延長、宇宙、ベンチャーキャピタルおよびテクノロジー分野で22のスタートアップを設立。現在の主要なテクノロジーとして、量子コンピューティング、人工知能(AI)、ネットワーク、センサー、ロボテックス(ロボット工学)、仮想現実、拡張現実、3Dプリンティック、ブロックチェーン、「材料科学」とナノテクノロジー、バイオテクノロジーを紹介。それらのテクノロジーの「コンバージェンス」(融合)によりこの先10年で変化する、交通、小売、広告、エンターテイメント、教育、医療、長寿、保険・金融・不動産、食料、環境、統治、宇宙などの変貌を予測。

『LP300選』吉田秀和、新潮文庫(1981年2月絶版)

『名曲三〇〇選』吉田秀和、ちくま文庫(吉田秀和コレクション)(2009年2月)

著者は、クラシック音楽の豊富な体験・知識をもとに、音楽の持つ魅力や深い洞察を、すぐれた感覚的な言葉で表現し、日本の音楽評論において先導的役割を果たす。グレゴリオ聖歌やルネッサンスの音楽から、ブーレーズやシュトックハウゼンらの現代音楽まで、音楽史の流れを解説しながら名曲300曲を選び、ベスト・レコード(ちくま文庫では未掲載)を紹介。

〇首藤典子(一文)

『めぐみ園の夏』『破天荒』高杉良、新潮文庫
80冊もの経済・企業小説を書き上げた作家が書いたとは思えない、意表を突く穏やかなタイトルに引かれ手に取ってみた。『めぐみ園の夏』では、作者が、両親が生きているにも関わらず、その不仲により、戦争孤児となった者達と図らずも同じ施設で暮らすことになったという経緯から始まっている。施設内でのいじめや暴力、園長の理不尽な扱いにもめげず、それらに果敢に立ち向かっていく少年時代の作者が描かれている。また、通っていた学校で飛び抜けて優秀な成績であったが、総代への選出は担任他級友達からも認められているのに、施設に居たことを理由に学校側から推薦を受けられなかったという、不当な扱いを受ける。しかし、そんなことをものともしない人生を送っていくことになる、施設を出た後の続編『破天荒』へと繋がっていく。その生き様がとても小気味良い。

『破天荒』は、児童養護施設を出た作者が、新聞記者として取材を重ね、経済界の著名人とどのように関わりあい、付き合ってきたかの様子、日本が高度成長の波に乗っていたこともあり、華やいだ時代を思うがままに生き、自分の持って生まれたものを使いきり、「筆一本で活躍する」というかねてからの願いを実現させたことに羨ましささえ感じる。

〇沖宏志(理工)

『ザイム真理教』森永卓郎(フォレスト出版)
『日本経済は復活できるのか』野口悠紀雄(SBクリエイティブ)
 失われた30年の原因について対称的な意見の2冊。
 森永卓郎は、「消費税」という重税で需要をシュリンクさせた需要側の問題とし、野口悠紀雄は、円安政策によって、日本企業の経営者やエンジニアが油断して競争力が落ちたという供給側の問題としている。個人的には、需要側/供給側と明確に言えなくて、日本の強みが環境変化によって強みでなくなった位ではないかと言う意見。人口オーナスの影響もかなり大きいと思っている。

〇露木肇子(法)

『1945年のクリスマス-日本国憲法に「男女平等」を書いた女性の自伝』ベアテ・シロタ・ゴートン、構成・文 平岡磨紀子、朝日文庫

朝ドラの「虎に翼」が始まって2ケ月経過し、ついに日本国憲法が登場した。これから4ケ月間、寅子は憲法という翼を得て、理想を求めて羽ばたいていく。寅子は家庭裁判所設立に関わっていくが、憲法24条の「家庭生活における個人の尊厳と両性の平等」の条文が家裁の基本理念となる。

この条文の草案を作ったのが、今回紹介する本の語り手、ベアテ・シロタである。ベアテは1923年生まれのロシア系ユダヤ人、父はキエフ生まれのピアニストのレオ・シロタで、ベアテが5歳の時、山田耕筰に請われて来日する。ベアテは日本で成長したので日本語が得意である。15歳からアメリカに留学したが、2年後日米開戦のため両親との連絡が途絶え、戦後両親に会いたい一心でGHQ民間人要員となって日本に戻ってくる。そして、22歳で憲法草案作成グループに抜擢され、女性の権利条項を任される。ベアテは法律については素人だが、戦前の日本の男尊女卑の社会を知っていたため、女性の幸せのためにベストを尽くすことを決意し、ソ連憲法やワイマール憲法を参考に、母性保護、平等教育、同一賃金等につき7つの条項を作成した。しかし、具体的な内容は大幅にカットされ、すべてを集約する内容にて憲法24条が生まれた。

 是非「虎に翼」を観ながら、憲法24条の意義を考えてみてほしい。

〇加藤透(理工)

『風の歌を聴け』村上春樹、講談社(2004年文庫初出)
50年の時の経過を当時、話題になった本を再読することで、振り返ってみた。何よりも村上春樹がここまで人気と評価が上がるとは思っていなかった。一番不思議な構成は、序文と後書きなどで、繰り返し米国人作家の具体名を出して、謝意を語っていること。気づくのが遅く恥ずかしいが、これが全て架空の作り話である事を知った。結果として、物語、エピソード、主人公、登場人物のキャラクターはほとんど虚構のうえに存在している事を知った。リアリズムの現代文学と対比して、ポスト・モダンの文学と評した女性がいた。なぜ、このような屈折した構造にしたのか。しかし、当時としては例がなく、斬新な企みといえる。しかし、この「発明」で、何を表現したかったのかは、よく分からない。

『なんとなくクリスタル』田中康夫、河出書房新社(1983年)

著者は、当時無名の大学法学部5年生の、田中康夫の作品。ページを開くと、右ページにストーリーがあり、左ページはびっしりと注釈で埋め尽くされている。21歳の主人公の女子大生が身にまとっている衣装のブランド、お気に入りの店、好みの音楽、好んで散策する街並みなどが、田中の、時に素直な、時にシニカルな注釈が書き連ねてある。50年前にリアルタイムで読んだが、高等遊民達のこのような通俗的な物や事に対する賛美が、学校の授業とアルバイトを行き来した当時の自分の生活感覚と大きくかけ離れ、強い違和感を感じたが、今回読み直しして、同じ違和感を抱いた。どこに、どうやって、これらの遊民達は成り立っているのか。しかし、この本は、そのリアリティを探るのではなく、散りばめられた当時の消費文化を回想するに留めるべきだ。僻まなければ、当時の文化的様相を回想する立派なテキストであり、軽薄ながら濃密な記録になっている。

『岬』中上健次、文藝春秋(1976年)
 注目すべきプロット(筋)は、以下の通り
1)主人公は、土木建設の組の主任として働いている。日を浴びて、汗をかき、山裾の景色と一体となり、その描写は官能的ですらある。都会を舞台とした都市的小説とは大きく異なる。このような描写が描かれたのは、希なことである。
2)現在の義父とは別の、実父に対する憎しみが繰り返し独白され、全体のリズムを形成している。その心境は、エディプス・コンプレックス、「父殺し」の感情であり、第2部
の「枯木灘」へと劇的に進んでいく。
3)物語に緊張感を与えるのは、義理の兄の狂気と自死のプロットである。
4)実父が娼婦に生ませて、娼婦として働く妹を主人公が買い、実父への復讐を果たすことでこの中編は終わるが、感情は妹への「愛しさ」へ転じる。
 全体的に、短文の繰り返しや、同一事象の繰り返しの叙述など、実験性を兼ね備えている。これは、前衛ジャズの繰り返しのフレーズを参考にしたという。

〇斎藤悟(社学)

 いつもレベルが高く身が引き締まります。いつも和やかで楽しませて頂いて居ります。
有難う御座居ました。次回も楽しみにして居ります。

〇前田由紀(一文)

「RHEINGOLD ラインゴールド」ファティ・アキン監督

 ドイツの人気ラッパー、カタ-(ジワ・ハシャビ)の伝記映画。イランでジワの父親は有名な音楽家だったが、イスラム革命によりクルド系難民としてドイツに亡命し、貧困の中で育つ。やがて裏社会に足を踏み入れ、金塊強盗でつかまり、刑務所へ。そこで、鬱屈した自分の生い立ちをラップで歌い、ラッパーとしてブレイクする実話である。様々な言語が飛び交い、他国で何とか生き延びようともがく若者たちのエネルギーがみなぎる。クルド系のみならず、パレスチナ、トルコ、シリア等ドイツでの移民社会を垣間見ることができる。

『アフガンの息子たち』エーリン・ペーション、ヘレンハルメ美穂訳、小学館

 スウェーデンの難民児童施設で働く若い女性レベッカは、アフガニスタンから逃れてきた三人の少年を担当することになる。家族と離れ一人で避難してきた少年たちは、この施設に辿り着くまでに過酷な体験をしており、心を閉ざし、18歳の成人になれば母国に強制送還されるかもしれない不安がよぎる。アフガンからの難民は、他の難民とはまた違う境遇の悲惨さが、ある程度の距離感をもって接するレベッカの静謐さにより更に際立って伝わってくる。

『ビギナーズクラシックス日本の古典 枕草子』角川書店編集、KADOKAWA(角川ソフィア文庫)
 NHK大河ドラマ「光る君へ」が放送されている。『枕草子』の背後にある、悲劇の中宮定子を敬慕し、定子の素晴らしさを称え、お仕えした日常を慈しむ清少納言に思いを馳せて読むと、より味わい深いものとなる。ドラマから平安時代の住まい、食事、装束、かな文字、暮らしぶりが想像できると、すぅーっと平安文学へと自然と入っていけるような心持ちがする。

*次回は、宮田晶子さん(政経)の司会で、8月23日(金)夏の54ら読書会を予定しております。

2024/04/21早慶レガッタ応援報告

54ら会第9回早慶レガッタ応援報告

2024年4月21日(日)隅田川で第93回早慶レガッタが開催されました。

54ら会では、10:00から54ラン会が隅田川テラスランしつつ、レガッタ観戦。女子はいつもどおりの勝利でしたが、第二エイトは残念な結果でした。

13:30から、54ら会応援団が、桜橋近くの墨田区側に三々五々集合し、13人で応援しました。まずOBエイトは幸先良く勝利。それぞれ持ち寄った飲み物や差し入れの桜餅、ワインを頂きながら、対抗エイトのレースを待ちました。スタートしてから約10分スマホ中継でレースの様子を聞き、ついに見えてきた両艇。早稲田がリードしていることに喜びながら、目の前を通り過ぎる艇に大声で声援を送った結果、0.25艇身の勝利!見事、昨年のリベンジを果たしました。

祝勝会は吾妻橋「金の炎」のビルにあるフラムドールで。美味しいアサヒビールで祝杯をあげました。その後、盛り上がった勢いでカラオケへと流れ、楽しい1日となりました。
(櫻井直子記)

参加者

遠藤弘文 岡野勝 系野力 小林章子 櫻井直子 首藤典子 鈴木忠善 田角成人 番平均 日比野悦久 平野伸一 広渡紀子 益田聡

2004/06/01ゴルフを楽しもう会報告

54ら会ゴルフを楽しもう会 新緑ゴルフの報告

2024年6月1日(土)、武蔵の杜カントリークラブにおいて、恒例となりました「54ら会ゴルフを楽しもう会 新緑ゴルフ」が開催されました。
数日前に台風1号が発生し、雨の予報でした。気持ちが重くなります。それが、前日には予報が晴に変わり、スタート前の集合写真の時には気持ち良い青空に。新緑が青空に映えます。
雨予報を晴に変える「持ってる」面々、初参加の二名を加え総勢22名が集まることができました。
仲間が増えることはとても嬉しいことです。
ゴルフを通じて仲間がひろがっていきます。今から始めても遅くはありません。
今回初参加の一人は、54らに惹かれて25年ぶりのゴルフです。「早稲田スピリッツはここにあるから〜」ですね。

プレーの方は、コースの手入れが行き届いていて、また新緑がとてもきれいで気持ちよくラウンドをすることができました。
メンバーとの話も弾みます。いつも54らゴルフは楽しい。
プレーの後は、恒例の「反省を全くしない」反省会です。
クラブバスの発着駅には飲食店が無く、駅から少し離れたお母さんと娘さんが切り盛りしている昔ながらのお蕎麦屋さんでの開催です。お母さんはきっと昔は看板娘だったのでしょう。
本日の優勝がかかった六大学野球早慶戦の初戦に勝ち、今回こそ優勝してほしいなど、話題は尽きません。楽しい時間はあっという間に過ぎ去っていきます。
次回の再会を誓ってお開きとなりました。
賢明な54らは、行儀よく電車に揺られて家路につきました。

文責 益田 聡(理工)

参加者(50音順、敬称略)
伊井博、石川昌義、石川由美、浦島浩幸、小山田薫、片桐孝宏、片桐幸、北島正一、系野力、櫻井直子、桜田雄
幸、澤田環、篠崎行良、首藤典子、鈴木忠善、関口研、中村敏昭、早川一秀、平野伸一、堀尾正明、益田聡、横
田敬介

益田 聡

2024/04/06第13回ボウリングの集い報告

4月6日、高田馬場グランドボウルにて
第13回ボウリングの集いを開催しました。

参加者は男女各3名で、個人戦とペア戦を行ないました。
個人戦の1ゲーム目は前田さんが抜群のコントロールでスペアを重ね、
大差のリードを奪い、岡野が終盤のダブルで2位で折り返しました。
2ゲーム目に入り、実力者の藤原さんがノーミス、ターキーの爆発力で
追い上げましたが、ハンデにも恵まれた前田さんが悲願の初優勝を
とげました。華麗なフォームの秋田さんが3位に入りました。
ペア戦は1ゲーム目は前田・岡野組の圧倒的リードでしたが、
2ゲーム目で秋田・藤原組が本来の実力を出し、大逆転で
優勝しました。右や左に球がそれてしまった今野さん、パワフル
ボウルの大和田さん組は今回は残念な結果となりました。
投球終了後は最寄りの石庫門の餃子で懇親を深めました。

次回は7月12日(金)1時より高田馬場グランドボウルにて
実施致しますので、ご参加くださいませ。

尚、集合写真の端に移っている大柄の方は当ボウリング場所属の
田中圭吾プロです。

参加者:秋田美津子、大和田秀二、今野玲子、
    藤原雅博、前田育子、岡野勝  6名

                           岡野勝

2024/02/16第16回冬の読書会報告

0216第16回冬のオンライン54ら読書会
2024. 2.16

【参加者】
篠原泰司(一文)、福島碧(社学)、加藤透(理工)、
沖宏志(理工)、首藤典子(一文)、内田大雅(二文)、
露木肇子(法)、仁多玲子(商)、石河久美子(一文)、
斎藤悟(社学)、前田由紀(一文)宮田晶子(政経) 
(以上12名、敬称略) 

なお、これまでの 読書会報告集Book List、もご覧いただけます。

〇篠原泰司(一文)

 『源氏物語』①~④  紫式部、角田光代訳 河出文庫 古典新訳コレクション 

 以前、原文(古文)で源氏物語を読んでいたことがあって、途中で止めてしまったことがある。いつか再開しようとずっと思っていたところ、今年(2024年)のNHK大河ドラマが紫式部をテーマにしているので、これを機に源氏物語への再挑戦を決意した。

 いずれ原文(古文)で読むにせよ、先に大まかに物語の全体像を現代文でとらえておいた方がいいだろうと、再開してみて感じた、それで角田光代の現代語訳を読むことにした。

 では、多くの女流作家の現代語訳があるなか、なぜ角田光代なのか?

 第一にオリジナルにかなり忠実な訳であるという印象があること。第二に物語中の和歌の解釈が比較的しっかりしている感じがあること。そして、第三は現代の小説を読んでいる感じがして、楽しく読めるような気にさせてくれるところである。

 今は文庫③の「少女(おとめ)」のところを読んでいる。

 『世界はラテン語でできている』 ラテン語屋さん SB新書

 私自身はラテン語にはもともと興味があるので、この本を読むことには全く抵抗がないのだが、なぜベストセラーになるくらいに買われて読まれているのかよくわからなかった。しかし、読んでみてその理由がわかったような気がする。あの「ハリーポッター」では多くのラテン語が登場するらしいのだ(私は「ハリーポッター」を読んだことがない)。また、この本は語学学習者だけに書かれたものではない。どちらかというと歴史や地理についての教養書という趣がある。これも売れる理由か?

 実は我々の日常生活に入り込んでいるラテン語がとても多いことが、読んでよくわかった。語源的に考えれば、欧米系の言語としては英語の次くらいに日常生活に入り込んでいる。例えば、アリバイ(他の場所)はALIBIから。エトセトラ(他のものたち)はET  CETERAというように。

 この本を読めば、世界の歴史及び地理的なことがらが、今までよりも深く理解できるようになるだろう。

〇福島碧(社学)

 『天地明察 上下』 冲方丁 角川文庫 

 以前、この読書会で、冲方丁の『光圀伝』を紹介され、その後、この「光圀伝」が非常に面白く読ませていただいたので、同じ著者の本を読んでみた。この「天地明察」は、暦を作った人の話。主人公の「とにかくくじけない」姿勢に、深く感銘を受けた。

 また、「カラン コロン」ーこれは、主人公が初心に返る時の心の音と思われるが、さらに進んで他の意味も含まれているのでは?天に向かって聴いているのでは?と思ったりした。

 『虜人日記』 小松真一 ちくま学芸文庫 

 こちらも、以前この読書会で、「一下級将校の見た帝国陸軍」山本七平著を紹介いただき、読ませていただいたところ、その中でたびたびこの「虜人日記 小松真一著」が引用されていたので、読んでみた。

 著者の小松氏は、戦時中、戦地でお酒を作るために東南アジアへ赴任した方。戦時中、出征した兵隊さんたちが、アジアでどんな暮らしを実際していたかがよくわかった「ひどいなあ」が感想。

 著者は、帰還後、戦時中のことは一切語らず、この本も、出版を目的とせず、小松氏が亡くなった後、一周忌に記念として親しい方に渡したところ、評判となって出版された。著者は、戦地の記録として、すべてこの日記に書き残したものと思われる。

『理想はいつだって煌めいて、敗北はどこか懐かしい』史明・田中淳(構成)、講談社

 2カ月に1回、東京芸術劇場でブランチコンサートをマゴと楽しんだ後、決まって池袋西口の人気中華料理店「新珍味」(史明氏が作ったお店)で台湾ラーメンを食べるだが、そこにこの本のポスターが貼ってあり、取り寄せて読んでみた。この本は、台湾の前総統である蔡英文が推薦している。「史明おじさんは、誰よりも強い行動力を持つ人です。彼の物語は、台湾、日本、中国の激動の歴史そのものです」

 中国大陸のスパイだった史明氏が、どこで何が原因で台湾独立派へ転換したのか、それを知りたくて読んだ。十分な答えを得ることができたように思う。

〇加藤 透(理工)

Permaculture: A Designers’ Manual, Bill Mollison, Tagari Publications Australia

『パーマカルチャー菜園入門』設楽清和 家の光協会

 パーマ・カルチャー農園の本について報告したが、何か、自分の趣味優先のようで、反省している。しかし、この「地上の楽園」とも例えられた、有機農園の最盛期に訪問することができたのは、幸運だったというしかない。みなさんも、このような農園があったことを覚えておいてほしい。

 次回以降、美学、農学からは離れ、このお集まりを活用して、40年ぶりに小説を取り上げて、読んで感想を報告したい。よろしくお願いします。

〇沖 宏志(理工)

『こころを旅する数学』ダヴィット・ベシス 晶文社

・数学においては脳内イメージの構築が重要。

・「天才数学者」と我々の違いは、「脳内に知覚イメージを構成する方法を知ってるか、知らないか」だけ。

脳内イメージを自由に展開する訓練を通じて数学する能力は向上させられる。

・数学的アプローチは頭の中のヨガのようなもので、数学は脳に作用し、世界の見方を変える。数学は、指せないものに正確に話す試みのうち、人類唯一の成功例。

…というような事を言っていて実におもしろい。

〇首藤典子(一文)

80’s エイティーズ ある80年代の物語』橘 玲 幻冬舎文庫

「マネーロンダリング」 「タックスヘイブン」の著者が過ごした80年代を書いたもので、70年代後半に在籍した第一文学部で一部重なる世情、新宿、高田馬場界隈の当時の風景に頷きながら、著者の歩んできた出版業界での仕事、生活の様子、キャリアを重ねて彼自身が変わっていく姿、どのように成功を納めていったかを知り、濃い人生を歩んできた人だと、同郷の誼もあり嬉しくまた誇らしくも思える。

 また、オウム真理教への潜入取材を試みたり、ドラッグに溺れていった同業者や、仕事の苦しさから仕事も家族も失い放浪していく編集仲間と関わったりしながら、それに感化されることなく、小説執筆の境地に至っていく、危ないながらも客観視できる強さがあればこそ、と思える作品。

〇内田大雅(二文)

『「原因」と「結果」の法則』ジェームズ・アレン 坂本貴一訳、サンマーク出版

 デール・カーネギー、オグ・マンディーノなど、現代成功哲学の祖たちが、もっとも影響を受けた伝説のバイブルAs a Man Thinketh。聖書に次いで一世紀以上もの間多くの人々に読まれ続けている、超ロング・ベストセラー、初の完訳。

 この世は道理でできている。道理を無視して成功はありえない。

〇露木肇子(法)

『家庭裁判所物語』清永 聡 日本評論社

『三淵嘉子と家庭裁判所』清永 聡 日本評論社

 この4月からNHK朝ドラ「虎に翼」が始まる。ヒロインは、女性初の弁護士、判事、裁判所長となった三淵嘉子さんがモデルである。

 三淵さんは戦前法学部で唯一女性に門戸を開いた明治大学を卒業し、昭和13年に司法試験に女性として初めて合格し、昭和15年弁護士になる。昭和22年、まだ裁判官を男性に限る法律が改正される前に、彼女は裁判官採用の願いを出し、司法省は困って、とりあえず民法改正作業を手伝わせた。家制度をなくし、男女平等を基本理念とする現民法は、昭和22年に制定された。昭和24年にはGHQ提案の家庭裁判所が発足した。

 三淵さんは同年から地裁判事補になり、昭和37年に家裁に異動になる。そして、早稲田出身の宇田川潤四郎裁判官のもと、アメリカの家裁をモデルにした、独立的・民主的・科学的・教育的・社会的家庭裁判所を実現すべく奮闘する。本書には、この経緯が資料に基づいて詳細に書かれている。

 家庭裁判所には、今多様な問題が持ち込まれている。DV・モラハラ・虐待を理由とする離婚や親権争い、LGBTに関連する問題等である。これらは人の命や生き方に直接関わってくる。

 今後親権等について民法改正となれば、ますます複雑化・深刻化することが予想される。およそ家裁の現体制で処理できるとは思えない。裁判官も調査官も研修も庁舎も明らかに不足している。

 家裁の機能が大きな問題となっているいま、「虎に翼」が発足当時の理想に燃える家裁をどのように描くか、今からとても楽しみである。

〇仁多玲子(商)

『終止符のない人生』反田恭平 幻冬舎

 この本は、反田恭平の自伝のような本。小さい頃、ピアノを弾くようになった経緯から始まって、ショパンコンクールで2位入賞するまで、自分の観点から詳しく語られている。

 子供の頃は、父親の影響が大きかったようだ。父親に反発しながら、ピアノの道に進むようになった。成長してからは、優秀な師につながり、いまの反田恭平が出来上がったと言える。

 やはり、何かで名をたてる人は、才能も必要ですが、運も必要なんだということが、よくわかる。

 そして、最後にショパンコンクールだが、やはり、外国人の審査員、聴衆に受けられるよう、日本人、「侍」を意識してピアノを弾いたようだ。そういう意味で、反田さんは、演出力もあったと思われる。

 いろいろな意味で、反田恭平というピアニスト、彼は、これからは小さいころから夢だった指揮者になろうと努力しているようだが、彼を見守りたいと思う。

〇石河久美子(一文)

『最後の授業-心をみるひとたちへ』北山修 みすず書房

 著者はフォーククルセダーズのミュージシャン、「帰ってきたヨッパライ」の作詞家であるが、その後、精神分析の専門家になり九州大学教授となる。本書は、九州大学での最終講義を中心に、学生たちに伝えたいことや彼の精神分析感をまとめたもの。作詞家は人の心を言葉でなぞる仕事だから、人の心を言葉で取り扱う臨床心理学の精神分析を選んだとの転身のいきさつに納得。

 昔話や神話を精神分析に活用する方法を取っており「鶴の恩返し」に思い入れがあるようだ。異類婚姻説話は西洋にもあるが、正体がばれても去らずハッピーエンドになる話が多いといった物語の読み解き方も新鮮で面白かった。

(映画)『JFK 新証言 知られざる陰謀』オリバー・ストーン監督(2021年) 

 ケネディ大統領暗殺にまつわるドキュメンタリー。同じくオリバーストーンにより1992年に作成された「JFK」は、豪華俳優をそろえ事実とフィクションを織り交ぜた社会派エンターテイメントであったが、こちらは新たに公開された文書や関係者へのインタビューを元にストーンの仮説を緻密に検証していく。情報量が多く当時のアメリカの立ち位置、世界情勢に関する知識不足のため、未消化に終わったが、底知れぬ闇の深さを感じた。頭をフル回転させて観るべき作品。

〇前田由紀(一文)

『百年の子』古内一絵 小学館

 小学館は、いまでこそ総合出版社だが、名前でも分かるように創業当初は、小学生用の学習雑誌学年誌から始まった出版社である。関東大震災前年に創刊された。私たち昭和世代では、おなじみの雑誌だと思うが、私も学年誌「小学〇年生」の毎月号の発売を楽しみにし、家族と一緒に付録を組み立てたことを思い出す。これは、創立百周年を迎えるにあたって、編集部が、小学館の歴史を振り返る小説となっている。特に戦時下での記述に重きがおかれ、著名な作家たちが執筆し、国策雑誌として志願兵を促すメディアとなっていたことにも気づかされた。メディアの罪深さも世相を反映したとはいえ事実として知っておくべきである。

(映画)『ゴジラ-1.0』山崎貴VFX・脚本・監督 東宝

 ゴジラ生誕70周年記念作。前作『シンゴジラ』も面白かったが、今回欧米でもかなり人気があるということで先月鑑賞し、その理由を実感した。VFXでは、職人技ともいえる丁寧な作りで、海の波形には、1年間費やしたという。スタジオの若手が精巧な作りに大きく貢献したことも知り、うれしくなった。『ゴジラ対モスラ』を子供時代に観て特に印象に残っていて、力強いテーマ曲が懐かしく、感動した作品となった。54ら会の皆さま、必見!

〇宮田晶子(政経)

『鎌倉の名建築をめぐる旅』内田青蔵、中島京子 エクスナレッジ

 私は建築が好き。専門的な知識はほとんどないが、古い建物に入ると、そこに生きた人々の暮らしや思いが垣間見られるような気がして、興味深い。この本は私が住む鎌倉にある名建築を近代建築史が専門の内田氏と『小さなおうち』で直木賞を受賞した中島氏が巡り、建築的な解説を内田氏が担当、中島氏は鎌倉と建築をめぐるエッセイを寄せるというスタイルになっている。本を手に取った時は、鎌倉の古い洋館の紹介本かと思ったが、建長寺や鶴岡八幡宮などの寺社、近代美術館などの新しい建築についての解説もある。写真が多く、見ているだけで楽しいが、中島氏のエッセイや両者による対談も面白い。最近のタワマンなどは和室がない物件も多く、「6畳」と言っておおよその大きさが共有できる日本人の感覚が失われるのは勿体無い、という指摘が興味深かった。

2024/01/27ゴルフを楽しもう会初打ちゴルフの報告

2024年1月27日(土)、名門中山カントリークラブにおいて、恒例となりました「54ら会ゴルフを楽しもう会 新春初打ちゴルフ」が開催されました。
今回は新メンバー2名を迎え総勢20名が集まりました。
ゴルフのお陰で仲間が増えていくのはとても嬉しいことです。
当日は雲一つない快晴に恵まれ気持ちのよいラウンドとなりました。
ゴルフを楽しもう会ゴルフでは順位も付けなくて、同期が集まって楽しくゴルフをするだけという会の名称通りのゴルフをしています。
いつもスタート前に集合写真を撮っています。写真を見ると松山英樹や岩井姉妹が写っているのかと見間違うほど若々しくて元気な仲間たちです。
ラウンドのあとは、楽しみな反省会です。プレーのあとのお酒が美味しいこと。
またここで、更に親交が深まっていきます。早稲田に入学して良かったなとしみじみ思う瞬間です。
いつも土日で開催していますが、そろそろ平日開催にしてはどうかという話もありましたが、皆が集まれる土日に次回もやりましょうということで、次回は6月1日(土)開催となりました。
メンバーみんな、次回ゴルフを楽しみにしながら毎日を過ごしています。

文責 益田 聡(理工)

参加者(50音順、敬称略)
稲葉浩久、浦島浩幸、遠藤辰也(反省会参加)、大和田秀二、
小山田薫、片桐孝宏、片桐幸、系野力、桜井直子、桜田雄幸、
篠崎行良、首藤典子、関口研、寺内千賀子、中村敏昭、
早川一秀、平野伸一、堀尾正明、前田佳子、益田聡、森元晴一

2024/01/20早稲田駅伝参加報告54ラン会

去る 1/20(土) 12:30より、日産スタジアムにて開催されました。今年も出走者に雨男が3人いる為 小雨に見舞われました。身体は殆ど濡れる事無かったのですが、この冬1番の寒さで芯底身体が冷え切ってしまいました。
が 反省会で中華三昧 餃子、焼売、小籠包で身体を暖めました。

1周 1.6k 14周を8人で襷を繋ぎ無事完走できました。
櫻井さんの娘さん 奥野さんが期待通りのラン、岡野さんの膝痛によるリタイアで木田さん、日比野さんに3周ランのおかげです。 

 結果
 タイム 1:58:02
     Over35 男女混合 43/69
     稲門会部門    12/20

年々 出走者が減少しており、今年は応援者も 2人だけと非常に寂しい思いがしました。
皆さん注目‼️     タイム、順位は二の次ですので是非来年も襷を繋ぎ、達成感を喜び合いましょう。

                            54ラン会 遠藤弘文

2023/11/17第15回秋の読書会報告

第15回秋のオンライン54ら読書会                       2023.11.17

【参加者】

尾崎健夫(理工)、篠原泰司(一文)、首藤典子(一文)、
山口伸一(理工)、仁多玲子(商)、鈴木伸治(商)、
石河久美子(一文)、宮田晶子(政経)、斎藤悟(社学)、
前田由紀(一文)

(以上10名、敬称略)

最近まで20度を超える日々が続いたと思えば、急に10度未満の極寒になり、温度の変化に体が追いつかないこの頃。紅葉もやっと見ごろとなった。第15回となった54ら読書会は、建築学科出身の尾崎さんを新たにお迎えし、読書の秋を満喫した。

多岐にわたる本に関する参加者からの紹介文を掲載する。(発表順、文体は常体に統一)

なお、これまでの 読書会報告集Book List、もご覧いただけます。

〇尾崎健夫(理工)

『大図説 世界の建築』ジョン・ジューリアス・ノリッジ編/堀内清治他監修、小学館 

(昭和52年初版 日本語版編集制作(株)一ツ橋美術センター)
世界における歴史上の名建築を約800の図版、写真とテキストで紹介した事典的読み物。アジアと中南米、古代、中世、ルネサンス、近代から現代へという大胆な章立てで、解説が展開する。今の我々には、ややヨーロッパに比重がかけられている感もあるが、それだけ欧州の建築文化が世界に与えた影響が小さくなかった証左とも言えるかもしれない。

〇篠原泰司(一文)

『「人口ゼロ」の資本論 接続不可能になった資本主義』大西広、講談社+α新書

SDGsと資本主義の問題よりも少子化(人口問題)と資本主義の問題の方が日本人にとっては、より深刻ではないか?危機から目を逸らしたほとんど効果のないような「異次元の少子化対策」では確実に日本は消滅していくだろう。統計資料を駆使した説得力のある本だ。

『キリスト教の本質 「不在の神」はいかにして生まれたか』加藤隆、NHK出版新書

信仰という立場からは距離をとり、客観的にキリスト教の本質を述べている。ユダヤ教とキリスト教の接続や四つの福音書の成立事情など、私にとっては、意外なところで、新しい知識を見つけるような驚きを感じさせる本だった。以前からキリスト教関係の本は多く読んできたつもりだが、この本には独特の説得力を感じた。とにかく、考察の深みを感じさせられる本だと思う。

〇首藤典子(一文)

『トリニティ』窪美澄、新潮文庫

「三組」を意とするタイトル。それぞれ違う環境で育った3人の女性が、出版業界で出会い、「新しい女性」として成功し脚光を浴び、学生運動の混乱時には共に争いの中に飛び込む。学生とともに社会に抗ったというきっかけが三人の結び付けを強める。そしてそれがそれぞれの仕事、生き方に強い影響を及ぼす。その後時代の流れにより、新しい世代に仕事を取って代わられ、老後は幸福とは言えないが、その三人のことをそのうちの一人の娘が記録し、本にすることで未来へ残す。かっこよく働く女性の先駆けとなった三人の話である。

『ゆりかごで眠れ』垣根涼介、中公文庫

日本が移民政策をとっていた時代、南米に渡った日系二世が、10歳の時にゲリラに両親を殺害された後、現地の女性に引き取られる。孤児の賢さに気付いたその女性に上の学校にいくように勧められ、進学が決まった直後、その女性が、実の息子と共にマフィアに殺される。その憤りが彼を日本人マフィアにし、復讐をする。復讐は成功するが、その争いの時に見つけた女の孤児を自分の子供のように育てる。日本で麻薬の取引を企てたときに、警察に捕らえられた子分を救い出そうと周到な準備をするが、直前に仲間内の抗争で殺害したグループの生き残りの返り討ちに遭い倒れる。愛情を持ったことが彼を弱くしたのかというところで終わるハードボイルドタッチのストーリーであった。

〇山口伸一(理工)

『月』石井裕也監督 辺見庸原作(角川文庫)

書けなくなった小説家(宮沢りえ)が重度障害者の施設に勤務し、介護職員のさとくんが、障害者を次々と殺戮する事件を起こすまでを描いた作品。さとくんは、障害者を邪魔者、汚物だと主張する。違和感を覚えるが、100%間違っているとは反論出来ない。

観たくない映画でもあるが、観なくてはいけない佳作。

『愛にイナズマ』石井裕也監督

 これは「月」と同時期に寡作の石井裕也監督が制作した作品。佐藤浩市、松岡菜優、池松壮亮の演技派に混ざっての窪田正孝の演技がひときわ光る。家族の意味を知らない窪田が、崩壊した松岡ファミリーの再構築を目撃して、ハグしあうシーンには感動。ハグの意味と効果を再認識した。

〇仁多玲子(商)

『人生たいていのことはどうにかなる』高尾美穂、扶桑社

 皆さん、ご存じかどうかわかりませんが、著者は、産婦人科医の高尾美穂先生である。最近、出された本だ。高尾美穂先生は、よく、朝NHKで放送している「朝イチ」にゲスト出演されていて、産婦人科医の目から女性にいろいろアドバイスされている。

 彼女の人生観や、いろいろな物の見方、考え方が、この本を読むとよくわかる。私は、すごく共鳴した。皆さんは、どうですか。一度手にとって読まれると面白いと思う。

〇鈴木伸治(商)

『2050年の世界 見えない未来の考え方』ヘイミシュ・マクレイ著、遠藤真美訳 日本経済新聞出版社 2023/7/10

著者は、英インディペンデント紙経済コメンテーター。1990年代に出版した『2020年地球規模経済の時代』での将来予測と現実での学びから、更に一世代(30年)後の世界経済がどうなっているかを、最新の経済モデルや過去2000年以上の各国国内総生産(GDP)の長期推計などを参考に、概ね前向きな展望として素描した本である。

 アメリカ大陸、ヨーロッパ、アジア、アフリカ、オセアニアの主要国の現状を示した上で、今後の変化をもたらす「人口動態」、「資源と環境」、「貿易と金融」、「テクノロジー」、「政府と統治」の5つの観点を説明し、その結果として前述の主要国がどうなっていくかを予測している。世界各国の現状と30年後の姿についての一つの考えを知ることができる。

〇石河久美子(一文)

『サーカスの子』稲泉連、講談社

著者は早稲田の卒業生。大宅壮一ノンフィクション賞も受賞している。著者は幼少の一時期を母親と共にサーカス団に参加し、全国を旅するという稀有な経験を持つ。その子ども時代の夢のような時間を、40年後、当時のサーカス団員を訪ねて話を聞きながら再体験していく。テント生活で旅から旅を繰り返す団員たちの仲睦まじい日常、100回以上の転校を繰り返すサーカスの子、退団後の通常の暮らしに適応することの困難さ、時代と共にサーカスが衰退し廃業していく様子などが浮き彫りになる。夢か幻かと思われる非日常の世界を繰り広げ、跡形もなく去っていくサーカスは、どこかあやしくもの悲しい。サーカスの追体験とともにサーカスの裏側も知ることができる貴重な書。

〇宮田晶子(政経)

『春にして君を離れ』 アガサ・クリスティー (ハヤカワ文庫)

クリスティーだが推理小説ではない。しかしミステリ的な要素もある作品。あるイギリス人女性が主人公。弁護士の夫を持ち、三人の子どもを育て上げ、家を守り、裕福で円満な幸せな家庭を築いている。本人も自分がやってきたことに自信を持ち、満足している。しかし、実はそうではない。この主人公は表面にばかり囚われて、物事の本質を見られず、人の本当の気持ちが理解できないために周りの人々を不幸にしてきた。娘の病気見舞いに訪れたバグダッドからの帰路、彼女は過去を思い出しながら、そうした自分に少しずつ気づいていくのだが‥イギリスに戻ると「やはり自分は元のままで良いのだ」と戻ってしまう。極端な描写はあるけれど、こういう女性は世間にいっぱいいるような気がする。また結局改心できないままという結末は残酷だけど、クリスティーらしい。

〇前田由紀(一文)

『相思樹の歌』西園徹彦、左右社

 ひめゆり学徒隊となる第一高女の卒業式のために、青年少尉太田博が作詞、第一高女の音楽教師東風平恵位が作曲した「相思樹の歌」の実話を元に創作された小説。二人とも戦死したが、この曲の生まれた奇跡に驚く。戦争の本土最前線として多くの若者が犠牲となった沖縄を舞台に、戦争末期の悲惨さと理不尽さの中、女生徒の美しい歌声が聞こえるような心持ちになる。戦後の沖縄も描かれ、沖縄の歴史を顧みた。「相思樹の歌」も聴いてほしい。

『福田村事件』森達也監督、辻野弥生原作(五月書房新社)

 関東大震災から今年で100年になった。その直後、朝鮮の人たちに関わる流言飛語が飛び交い、自警団と称して朝鮮人を襲撃する事件が各地で起きた。千葉の旧福田村でも、香川からたまたま来ていた薬売り行商団が朝鮮人に間違われ、地元の人たちに、妊婦、幼児を含め9名が惨殺された事件があった。この映画をきっかけにこの事件を知ったが、デマ・流言を信じてしまう人々の狂気の沙汰に戦慄した。記憶にとどめておきたい。

次回の第16回冬のオンライン54ら読書会は、2月16日(金)19:30~21:00に予定しております。司会は、宮田晶子さん(政経)。是非、ご参加ください。

 

2023/08/25第14回夏の読書会報告

2023.8.25

【参加者】

篠原泰司(一文)、村山豊(法)、鈴木伸治(商)、内田大雅(二文)、石河久美子(一文)、沖宏志(理工)、露木肇子(法)、山口伸一(理工)、前田由紀(一文)、斎藤悟(商)、仁多玲子(商)宮田晶子(政経)

(以上12名、敬称略)

 54ら会のオンライン読書会、3ヶ月ごとの開催で14回目を迎えました。今回は常連の皆様に加え、初参加の方がお一人いらっしゃいました。読書会の仲間が増えるのは嬉しいことです。

 以下は当日、挙げていただいた本を発表者のお名前とともに紹介いたします。推しの本について、それぞれ長いコメントをいただいており、それをそのまま(文体は常体に統一しました)掲載しております(順不同)。

なお、これまでの 読書会報告集Book List、もご覧いただけます。

1 篠原泰司さん(一文)

『一下級将校の見た帝国陸軍』 山本七平(文春文庫)

 1980年に出版された本ではあるが、現在も愛読者が多くぜひ読んでみたいと思っていた本。

一下級将校としての自己の従軍経験をとおして見た日本人の心性や日本的組織への洞察が素晴らしい。戦後78年を経過しても日本人と日本社会は、悪い意味でその本質を変化させずにいるのだと感じさせられた。

『マイ・ブロークン・マリコ』 平庫ワカ(KADOKAWA)

 昨年(2022年9月)に映画化され、023年8月29日現在Amazon Primeで無料視聴が可能。

「布団の中から蜂起せよ」という本で取り上げられていて興味を惹かれてコミック本を購入したのが数か月前。最近Amazon Primeで映画も視聴。なかなかの出来だと思った。

 主人公シノイトモヨが、父親からのDVの末に自殺した友人のマリコの骨壺を強奪して、東北地方にある「まりがおか岬」まで行って散骨するまでの話。ロードムービーである。シスターフッド(女性同士の連帯)の文脈にDVを置くことで新しい視界(希望?)が開かれたような気がした。「布団の中から蜂起せよ」p.83で高島玲が「物語が必要だ」と述べていることの意味はこういうことなのかもしれない。

2 村山豊さん(法)

『風と共に去りぬ』 マーガレット・ミッチェル(新潮文庫)

NYMC男声合唱団の演奏会準備で南北戦争に興味を持ち、「風と共に去りぬ」を初めて「いまさら」読んだ。南北戦争が太平洋戦争と酷似していると感じる一方、女性視点(妻、義妹)とのギャップが興味深い。レット・バトラーは素敵だがありふれたタイプ、スカーレットは可愛いが性格的に私には耐えられないと感じた。多面的なテーマ(恋愛、南北問題、黒人問題)と強烈な南部英語の表現が印象的で、原文も確認してみたいと思う。  例えば「命令形+さもないと『生皮を剝がしてやる』『尻を蹴っ飛ばしてやる』」等々

3 鈴木伸治さん(商)

『農業問題−TPP後、農政はこう変わる』本間正義(ちくま新書)

 相続した農地は、農地としてしか利用できず、賃貸・譲渡も農業者にしか認められていないと聞いていたので、農地に係る規制の内容について、市役所の農業委員会に聞きに行ったところ、「農地に係る規制を取りまとめた資料はなく届出書があるだけで、根拠となるものは法令で法令にあたってほしい」との回答であった。そのため、農地規制の解説書を探したが見当たらなかったことから、まずは日本の農業に関する本として読んだもの。

 日本の農業は、戦後の農地改革によって農地を小作農に解放したため小規模家族経営の農家を増大させ、それを保護するため現状でも農地の所有は農業者に限られ、法人は農業者が決定権を掌握する農業生産法人にのみ認める制度になっている。このため、農地が英国の1/40、フランスの1/20程度と小規模な農家がほとんどであるという日本農業の問題解決を阻害している。

 ただし、日本の農家は兼業農家が大層を占めて貧しくはないことから小規模優遇政策を支持しており、さらに農業協同組合は組合員や取扱高、政治家は農村票、農水省は予算の維持のため小規模優遇策を推進することになる。

『高慢と偏見』ジェイン・オースティン著 大島一彦訳(中公文庫)

 14年前に「自負と偏見」中野好夫訳を読んで高評価の記録を残しているものの記憶に残っていないことから、再読するために最近の訳本を比較して自分の世代に適っているのではないかと思い紹介したい。(注)次の冒頭の訳はあるWebに掲載されていたもの。

・中野康司訳、「高慢と偏見」ちくま文庫(2003年)

 金持ちの独身男性はみんな花嫁募集中にちがいない。これは世間一般に認められた真理である。

・小尾芙佐訳、「高慢と偏見」光文社古典新訳文庫(2011年)

 独身の青年で莫大な財産があるといえば、これはもうぜひとも妻が必要だというのが、おしなべて世間の認める真実である。

・小山太一訳、「自負と偏見」新潮文庫(2014年)

 世の中の誰もが認める真理のひとつに、このようなものがある。たっぷり財産のある独身の男性なら、結婚相手が必要に違いないというのだ。

・大島一彦訳、「高慢と偏見」中公文庫(2017年)

 独身の男でかなりの財産の持ち主ならば、必ずや妻を必要としているにちがいない。これは世にあまねく認められた真実である。

4 内田大雅さん(二文)

『死の講義』橋爪大三郎 ダイヤモンド社

 この本のテーマは死である。著者曰く、「日本人は死ぬということがどういうことか分かってない人がほとんどだ。それは言い換えれば、生きるとはどういうことかということが分かっていないという可能性が高い。この機会に死を鏡にして、自分の生きているいうことを照らし直してみよう」この本は僕が僧侶を目指して修行を積んでいたときに読んで、とても勇気づけられた。

5 石河久美子さん(一文)

戦争花嫁に関する本を2冊紹介した。

『非色』有吉佐和子(河出文庫)

 黒人兵と結婚した主人公が、混血児を日本で出産、その肌の色などで差別されることから、夫の住むニューヨークに移り住むが、そこはハーレム、稼ぎの悪い夫と次々生まれる子どもを抱えながら、貧困の中で生き抜く姿が描かれる。また、白人と結婚し裕福な生活をしていると思っていた戦争花嫁の知人が、アメリカ社会では、黒人より下に位置づけられるプエルトリコ人と結婚して自分よりさらにひどい生活をしていた顛末などが描かれる。アメリカの社会階層、人種問題の複雑さがストーリーを通して浮き彫りになっていくパワフルな作品。

『花嫁のアメリカ』成常夫(論創社)

 写真と文章を組み合わせたフォトノンフィクション。1970年代後半、100名余りの戦争花嫁を撮影取材、さらに20年後、その後の花嫁たちの動向を追ってまとめたもの。文化や言語の違う異国で離婚しシングルマザーになったり、「非色」の主人公のように黒人と結婚して差別や偏見にさらされたりの過酷な人生が本人たちの言葉で淡々と語られる。戦争花嫁たちは生きていれば大半が90代、すでに鬼籍に入った人も多い。花嫁たちの実態を記した貴重な記録である。

6 沖 宏志さん(理工)

『老神介護』劉滋欣(角川書店)

 5つの短編集。『地球大砲』は、主人公が「世界を破滅に導く男の子」で、野心と創造力をあわせ持つ。この男の子は中国、もしくは中国共産党を連想させた。「一党独裁全体主義」と「イノベーション」を今のところあわせ持つ中国が世界を破滅に導かないことを願う。

「扶養人類」は、貧富の格差がますます拡大して、地球がほとんど一人の金持ちの私有財産になってその金持ちが大衆に「地球から出ていってくれ」という話。ピケティの「テクノロジーの進化により、全人類の総需要が一人の人が半日働くだけでまかなえるようになった時、富の分配はどうするのか?」という問いかけに思いをはせた。

7 露木肇子さん(法)

『「赤毛のアン」の秘密』小倉千加子 (岩波現代文庫)

 1908年、カナダで、L・M・モンゴメリ作「グリーンゲイブルスのアン」が出版された。日本では1952年に村岡花子訳「赤毛のアン」の初版が出た。

 その後1979年にフジテレビがアニメを放映し、2014年にはNHKが朝ドラ「花子とアン」で村岡花子の生涯をとりあげ、2017年にはカナダで「アンという名の少女」というテレビドラマが始まり、現在もNHKBSで放映されているという人気ぶりだ。舞台となるカナダの片隅にあるプリンスエドワード島には、日本人観光客がひっきりなしに訪れ、日本で出版される写真集も多い。

 私も小学生からのアン・フリークで、モンゴメリの全作品を読破し、プリンスエドワード島どころか、モンゴメリが結婚してから15年ほど住んだトロント郊外のリースクデールまで訪れている。

 「赤毛のアン」にはいくつか謎があるが、最大の謎は、なぜ「赤毛のアン」は特に日本の少女に人気なのかである。

 またモンゴメリは、晩年はうつ病にかかり、1942年に67才で自殺したと言われているが、なぜモンゴメリは自殺に至ったのか、これが次の謎である。

 著者は早大院卒の心理学者であり、本著においてモンゴメリを冷酷に分析してこれらの謎に迫っているが、それはアン・フリークには時に怒りを覚えさせるほどの内容である。しかし、一方で、自己の矛盾を気付かせてくれる、私にはどうにも無視し難い本である。

8 山口伸一さん(理工)

『地図と拳』 小川 哲 (集英社)

 第168回直木賞受賞作。命をかけて満州の測量を描いた親子二代の技師の物語。

 ロシアの日本侵攻の恐怖にどう対抗するかで日本は満州の侵略を選択した。が、日清戦争で中国軍隊は恐れるに足りずと誤解した日本軍は、民衆の激しい憎悪からの抵抗に苦戦する。

 歴史上、外国との戦争や交渉の経験が浅い日本人に海外の統治は可能なのか。日本人が他人を使って事をなすマネジメント能力の低さを痛切に感じた。

9 前田由紀さん(一文)

『牧野富太郎自叙伝』牧野富太郎(講談社学術文庫)

 NHK朝の連続ドラマ「らんまん」のモデルとなった牧野富太郎の自伝である。日本植物分類学の草分けとして研究に邁進した軌跡は、実に面白い。土佐の旧家出身であるが、学問の盛んな土地柄で、十代前半で、福沢諭吉『世界国尽』、河元幸民『気海観瀾広義』等の日進の学問に触れ、英学もかなり早くから専門書を読んでいた。独学で植物学に関する書物を読み尽くし、精細な図解の技量も会得する。突出する才能は、大学では妬みの対象となり、冷たい処遇を受け、経済的にも困窮するが、土佐の岩崎氏など様々な篤志家が現れ、支援を受ける。最後まで一書生然として嬉々として研究に励み、採集で野山を駆け巡る姿は、清々しい。軽妙な語り口は、ユーモアにあふれている。家族の手記もあり、昭和天皇へのご進講で、皇居の植物について天皇と語り合う幸福な場面が印象的だ。

 読書会で、露木さんから、同じく牧野博士を主人公とした朝井まかて著『ボタニカ』を紹介された。自伝では独りよがりの面もあり、より客観的な牧野像が描かれていることだろう。

10 宮田晶子(政経)

『マチスのみかた』猪熊弦一郎(作品社)

 2023年8月20日まで開催されていたマティス展。それでマティスの弟子であった洋画家、猪熊弦一郎のこの本を手に取ってみた。画家の鑑賞の仕方というのが興味深かった。また、マティスはピカソのような天才というより努力の人なのだと感じた。単純化された簡単そうに見える線は何十枚ものデッサンから生み出されたもの。「マティスが好きと言い得るが、わかる事は難しい」という言葉に納得した。

本の紹介はされませんでしたが、ご参加下さった方から次のような感想をいただいています。

仁多玲子さん(商学部)

 先日の読書会は、今回紹介したい本が見当たらなく、見学で参加させていただきました。

 皆さんが紹介する本は、ユニークで聞かないと知らない本ばかりで、とても面白かったです。なかには、有名な本を、自分流に紹介された方もいますが、それはそれで興味深かったです。 幹事の皆さん、いついつもありがとうございます。読書会の盛会を、これからもお祈りします。