2025/06/23ボウリングの集い報告

 6月23日(月)14時よりビッグボックス8Fの高田馬場
グランドボウルにて第16回ボウリングの集いが男子3名、
女子3名の計6名で個人戦とペア戦が開催されました。


 優勝は華麗なフォームでスペアをマークしていった秋田
さんがゲットしました。ガーター、ミスの最悪スタートだった
前田さんが二ゲーム目に入ると右に左に曲げながらも
ミラクルカバーでストライク・スぺアを連発し、2位に食い込み
ました。出だしダブルとスタートダッシュを決めた高橋さん
でしたが後が続かずブービーに沈みました。表彰式を
終えた後、石庫門でビールと餃子で楽しく歓談しました。
優勝者のコメントでは人の数ほど愉快なドラマが生まれます
との事で皆様のご参加をお待ちしております。
 次回は9月を予定しております。

参加者:秋田、本多、前田、高橋、藤原、岡野 6名

                      担当:岡野勝
  

2025/05/23春の読書会報告

第21回春のオンライン54ら読書会                 2025.5.23

【参加者】

篠原泰司(一文)、石河久美子(一文)、沖宏志(理工)、首藤典子(一文)、山口伸一(理工)、露木肇子(法)、鈴木伸治(商)、宮田晶子(政経)、斎藤悟(社学)、前田由紀(一文)

(以上10名、敬称略)

 今回は、土の壮大な歴史から始まり、偶然にも参加者3名が最新の直木賞作家の伊予原新さんの作品が重なり、科学的な知識がちりばめられた文学作品の魅力が共有できた。広島の沖さんからは、広島の公共図書館による読書会リストの案内があり、読書会の文化が根付いていることを知りえた。教皇選挙の映画もタイムリーな上映で皆の関心を集める。他に、英国の著名な作家の作品、英国でベストセラーとなっている柚月さんの作品、注目を集めるフジテレビ関連作品、早大出身の綿矢さんの新作が紹介された。最後は、紹介作品に出てきた花巻の獅子踊りをきっかけに、福島の斎藤さんからの東北の旅の話題に広がった。

なお、これまでの 読書会報告集Book List、もご覧いただけます。

(発表順、文体は常体に統一)

〇篠原泰司(一文)

『土と生命の46億年史 土と進化の謎に迫る』藤井一至 、ブルーバックス2278、講談社

「土」の生成と増加、蓄積と消滅に関する本。「土」の歴史は微小な生物と鉱物などを含めた物質の広大な循環と代謝の歴史でもある。それは、テクノロジー(科学技術)の一切及ぶことのない世界である。植物のからんだ農業の分野とかなり関わりがあり、フィル―ドワークを主体にした研究でもあるので、まるで文化人類学の本を読んでいるような感覚を絶えず持ちながら読んだ。結論部分にはディストピア的な悲観論は一切ないが、個人的な感想としては人類の未来は明るくないという感想は思い描かざるをえなかった。テクノロジーを超える未来の思想のためにも読むべき一冊だと思う。

『新・古代史 グローバルヒストリーで迫る邪馬台国、ヤマト王権』

NHKスペシャル取材班、NHK出版新書735

3世紀~5世紀の日本の古代史を今現在の歴史研究の現場に即して探究した本。具体的には纏向遺跡と箸墓古墳、吉野ケ里遺跡などの遺跡の発見と調査の歴史、それに東アジアの古代史の文献の精密な読解が試みられている。NHKのドキュメンタリーの制作陣によって書かれているので内容の深さに比較してかなり分かり易く、信頼性抜群の読み物になっている。卑弥呼や大和朝廷などの日本古代史に興味のある人はぜひ手元に置いておくべき一冊だと思った。

〇石河久美子(一文)

『藍を継ぐ海』伊予原新、新潮社

今期の直木賞受賞作。五つの短編小説からなり、著者の地球惑星科学の研究者としての知識と経歴を生かした作品も多い。長崎の原爆投下直後、原子爆弾の正体を探ろうと被爆した岩石やがれきを集め科学的に検証しようとした地質学者の話が印象に残った。ミステリー仕立てでもあり、様々な情報を集め、それを組み立て考察して結論に導くといった展開がいかにも研究者らしい。全編を通じて普段馴染みのない科学の知識がストーリーに組み込まれており、科学を身近に感じることができる。

映画「教皇選挙」エドワード・ベルガー監督(米英合作2024年)

本年度アカデミー賞、脚色賞受賞作品。カトリック教会の頂点に立つローマ教皇を選ぶコンクラーベをめぐるストーリー。様々な謀略が展開し、投票の過程で有力候補者が刻々と様変わりしていく知的ミステリーエンタテイメント。映像も美しい。上映期間中に実在のローマ教皇が死去、コンクラーベが実施され、フィクションを現実が追う形になり話題となった。新しい教皇はどのような過程を経て選出されたのか、現実と映画をリンクさせて想像するとさらに面白さが増す。

〇沖宏志(理工)

『道元の哲学』小坂国継、ミネルヴァ書房
墓じまいをきっかけに、昔よく読んでいた正法眼蔵解説本を久々に読んでみた。3年前にここで発表した、シェリー・ケイガン本『死とは何か』は死というものを、哲学的に、「私」「同一性」「時間(今)」「神」「意識(言語)」といったものと論理的にからめながら、解き明かしていったが、この本も宗教の書である『正法眼蔵』を哲学的に解き明かしていて、実におもしろい。

*ところで、みなさんの地元で、読書会用の本を提供しているところはあるでしょうか?
また、ある場合、どの程度の本を用意しているのでしょうか?情報があったらください。
広島市の場合は下記の程度の本を用意しています。

https://www.library.city.hiroshima.jp/information/guide/images/index_dokushokai.pdf

参考に広島市の読書会用の本(先のURL)を、うちの読書会(みささ読書会)でどのように読んできたかのデータを下記に示します。(エクセルファイルがダウンロードされます)

https://www.com-net2.city.hiroshima.jp/mitaki/file/48

日付は、その本をいつ、みささ読書会で取り上げたか。Noは読書ノートへのポインタです。今年はみささ読書会の幹事が回ってきたので、過去のデータをちょっとDX化してみました。みささ読書会自体は1973年に設立されたらしいですが、図書館の読書会用の本というシステムが機能し始めたのは1980年代初頭あたりからだと思います。ちなみに、全国図書貸出No1の高知市 オーテピア高知図書館では、下記のような読書会用図書館本(614冊)を用意しているようです。

https://otepia.kochi.jp/library/holding04.html

*ちなみに広島市の読書会用図書館本は274冊。

〇首藤典子(一文)

青ノ果テ ―花巻農芸高校地学部の夏―』伊与原新、新潮社 
 主人公は地元で生まれ育ち、小さい頃から鹿踊りという東北地方で広く行われている舞踊に打ち込んでいて、その鹿踊りを続ける為に高校に進む。彼の近所に住み同じ高校に進んだ美術部の同級生の女子、2年で東京から転校してきた男子と、この3人が地学部に入部することになり話が展開していく。3人は親同士が子供達には明かされていなかった理由で実は繋がっていて、高校の地学部入部で運命とでもいうべき出会いをしたという物語。

この地学部創部の発案者であるひとつ年長の地質学に詳しいリーダーによって、自転車や電車を乗り継ぎ宮沢賢治の地学的世界を巡る旅(夏休みの合同研究)に出ることがこの作品の主軸をなしている。旅の目的は鉱物調査をしたい人、宮沢賢治の童話に出てくる地名は地理的にどの辺りを指すのか、その地点に立ってみたい人、幼い頃からの女友達と転校生の間にある秘密を聞き出したい為についていく人とそれぞれだが、2週間にも渡る旅の最後に台風に遭遇し山で遭難するのではないかという困難な状況の中で、本音を打ち明けることが出来、絆が生まれる。そして、美術部にも所属し、旅には同行しなかった幼なじみの女生徒が、キャンバスに夜になりかけの空の深い青を描こうとしていて、その色を「青の果て」と言ったことがタイトルになっている。

宮沢賢治の詩に「薤露青」という言葉があるが、闇に閉ざされる寸前にだけ見られる空の青を意味するものらしい。その「はかなさ」を表現したかったということであろうか。伊予原氏は「青」「藍」とこの色にまつわるタイトルが付いた作品があるが、その関連性が意図するところが何かは興味深いものがある。

〇山口伸一(理工)

『BUTTER』柚月麻子、新潮社

 保険金殺人容疑の梶井真奈子を取材する記者・町田は、彼女の言葉に影響され、欲望と自由の意味を問い直していく。梶井の「ストッパーを外さなければ幸福は得られない」という思想は現代人への挑発でもある。周囲との関係を壊しながらも町田は自分なりの答えを見出し、老後の孤独も自然と受け入れる平穏を取り戻す。ラストは意外にも清々しく、読後感が心地よい。

〇露木肇子(法)

『老いぼれを燃やせ』マーガレット・アトウッド作 鴻巣友季子訳、早川書房

著者は1939年オタワ生まれ、1985年46才の時に出した予言的ディストピア小説『侍女の物語』が世界的なベストセラーになり一躍有名になった。著者は2019年80歳になって『侍女の物語』の続篇『誓願』を出し、女性の生殖を管理した差別社会の崩壊を描いた。

 本書は著者が70代に発表した9つの短篇集で、その多くは、高齢者が長年の恨み・怒りを、人生の最後になって解決していく物語だ。書名となった作品は、姥捨てを極端にしたもので、暴徒が次々と老人ホームに放火する話だ。老化にめげない老人達のパワーに圧倒される作品集となっている。

〇鈴木伸治(商)

『獨白2011年3月「北の国から」ノーツ』倉本聰、

フラノ・クリエイティブ・シンジケート(2011年10月)

伝説的ドラマ「北の国から」のシナリオ作家倉本聰が、その30周年を記念して最初のシリーズ24話について、富良野塾OBライターへの特別講義として2011年2月末から4月頭にかけて語ったものである。途中で東日本大震災が起こったことで、天災や原発事故とも照らし合わせられている。自身のNHKとの衝突から大河ドラマ(勝海舟)を途中降板して札幌へ逃避行するなどの個人的背景や経験や、その時代の社会的背景から物語の創作について語られている。映像だけでなく、脚本を読みたくなる。

『「北の国から」異聞 黒板五郎 独占インタビュー!』倉本聰、講談社(2018年6月)

同じく倉本聰が語った「北の国から」のサイドストーリー。耄碌しかけた黒板五郎が過去をふり返って真摯に語る「北の国から」の撮影秘話で、殆どが真面目なノンフィクションとのことである。

『定本 北の国から SINCE1981』倉本聰、理論社(2002年8月)

「北の国から」の1981年放送開始から2002年最終回までの全原作シナリオが収録されている。

『メディアの支配者(上・下)』中川一徳、講談社(2005年6月)

フジサンケイグループに突然襲いかかった堀江貴文と、必死に防衛する日枝久。しかし、その日枝自身、かつてクーデターによって鹿内宏明を追放した首謀者であった。昨今のフジテレビをみると「歴史は繰り返す」を実感します。

〇宮田晶子(政経)

『パッキパキ北京』綿矢りさ、集英社

駐在する夫と暮らすため、コロナ禍が抜けきらない北京に赴いた元銀座ホステスの菖蒲さんが北京を味わい尽くす。著者の北京滞在経験がベースにあり、現在の中国(北京)のガイドとしても面白いが、痛快なエンタテインメントならしめているのは主人公菖蒲の強靭なメンタルとバイタリティ。最後に彼女は阿Q正伝の「精神勝利法」に行きつくが、そのとらえ方が面白く、この主人公に精神勝利法をもってきた綿矢りさの作家としてのセンスを感じた。

『べらぼう ~蔦重栄華乃夢噺~シナリオ第1集 Kindle版』森下佳子、NHK出版

大河ドラマのシナリオ集。第1回から、大変話題を呼んだ平賀源内の死が描かれた16回までが収められている。大河ドラマに付き物の戦闘シーンはないけれど、本屋同士のビジネスをめぐる戦い、幕府・大奥の権力争い、そして吉原の影の部分にも切り込んでいる今回の大河はとても面白いと思う(ただのイケメンと思っていた横浜流星の演技力にもびっくり)。映像もいいけれど、このシナリオでじっくりセリフを味わいたい。

〇斎藤悟(社学)

 参加させて頂き有難う御座居ました。母の部屋でしたので黙っている積りでしたが、発言を求められ口を開いてしまいました。東北が話題になっていましたので楽しかったです。

獅子踊りは北上から釜石にバイクで行く途中に、遠野の道の駅で偶々見ました。吉里吉里の海は国道45号から綺麗に見えます。吉里吉里駅も吉里吉里小学校もあります。ひょっこりひょうたん島のモデルの島もあります。何れも大槌町。井上ひさしさんの物語の世界、メルヘンです。

過日の故郷の話に続き東北の話か出て驚き楽しい話が出来て感謝して居ります。この会は特別に感じて居りましたが、矢張りです。東北人は、暗くて取っつき難いと東京等で言われますが、傷付き乍ら頑張って居ります。首都圏に長く住んでいた私は、Uターンして来て 故郷の人にそう言い、傷付け落ち込む事しばしばです。暗いのではないのですが、首都圏に慣れるとそう見えるのです。

過日、故郷は遠きにありて思うものとの解釈が変わったと話しました。賢治さんの畑は花巻にあります。井上ひさしさんの吉里吉里共和国、吉里吉里の海も吉里吉里駅も吉里吉里小学校も実在します。吉里吉里の海は45号線から綺麗に見え、三陸イチの美しさではないかと思われます。『青葉繁れる』は何十年も前に読んだ本で内容を詳細に覚えてはいませんが、井上ひさしさんの仙台一高時代の私小説、恋のお相手は宮城第二女子高の生徒、当時の学生生活等が描かれ、兎に角面白かったです。

子供の頃面白くて本気で見ていた TVドラマ「ひょっこりひょうたん島」もひさしさんの原作。その島のモデルになった島が実在すると知ったのは震災後だったと思います。大槌町役場を背にすると近くに見える江ノ島を彷彿させる島です。震災は悲惨でしたが、メルヘンの世界です。是非皆さんでいらして下さい。

仙台育英高校が甲子園で優勝した時、仙台に帰る時に TVで中継された場面は、白河の関を通過する時の新幹線の中、選手達が「白河の関だ」と言っていました。白河の関は仙台育英がある宮城県ではなく手前の福島県です。何故其処で中継なのでしょうか?甲子園大会では何県かや学校は関係なく、優勝旗が白河の関を越える事が東北の長年の悲願だったからです。白河の関は東北の玄関。甲子園大会では東北が一つになるのです。長い間、東北は弱かったからです。私もあの中継の場面で感動し、涙しました。東北人は暗いのではなく 純朴なのです。人を疑う事を知らず、黙っていると他人から嫌われる事も知らないのです。 狭い村社会で限られた人との関係を続け、人に慣れておらずシャイでもあります。話してみるとイメージと異なり、あまりにも純粋で優しく驚き自己嫌悪に陥る事しばしばです。Uターンして来て25年目なのに、未だ馴染めずにいます。

〇前田由紀(一文)

『藍を継ぐ海』伊予原新、新潮社

石河さんが紹介した本と同作品。5つの短編集。表題作は、徳島の孤独な中学生、沙月とウミガメの関係が描かれる。ウミガメは、一回に100個ほど産卵するが、ほとんどが捕食され、わずかに残った子ガメが、黒潮に乗って外洋に出る。そして30年かけてもどってくるという、なんとも壮大な旅である。その他のお話は、山口の萩焼、奈良の山奥のニホンオオカミ、長崎の浦上天主堂、北海道紋別の隕石の話であり、日本各地を科学的に振り返ることができ、贅沢な読書となるだろう。

『その本はまだルリユールされていない』坂本葵、平凡社

司法書士合格を長年目指していた主人公が、断念して学校司書となる。引っ越したアパートの大家が製本家であったことから、その繊細で奥深いルリユール(手仕事の製本)工房の世界に魅せられていく。白紙の原稿を製本依頼する謎の青年、手渡したバッジをした人しか会わない大家の孫娘、本の結婚式を開催する古本カフェの店長など不思議な世界が展開するが、彼女は周りの人々と温かい繋がりを深めてゆく。ルリユールの世界が実に美しい。

                                        映画「ドマーニ! 愛のことづて」パオラ・コルテッレージ監督(イタリア)

戦後間もないローマで、暴力を振るう夫、寝たきりの義父に仕え、仕事の掛け持ちで貧しい家計を支える主婦が、主人公。抑圧に堪え、家庭を切り盛りする女性を演じる監督兼主役のパオラ・コルテッレージの演技が素晴らしい。娘は母親を不甲斐ないと思い、金持ちの恋人を選ぼうとするが、彼女は、娘を救うため予想外の行動に出る。女性参政権により女性が解放される様が描かれるが、現代でも通ずる課題はあると言える。

*次回は、宮田晶子さん(政経)の司会で、8月22日(金)夏の54ら読書会を予定しています。

2025/06/08第4回ビール会報告

第4回ビール会(街歩き付)の報告

2025年6月8日(日)、旧万世橋駅跡にある「常陸野ブルーイング・ラボ」にて、第4回目となる「ビール会(街歩き付)」を開催いたしました。

今回の街歩きは、神田明神 → 湯島聖堂 → ニコライ堂 → 神田須田町界隈のレトロな街並みを散策し、最後に旧万世橋駅跡(マーチエキュート)および万世橋を巡るという、神田に残る歴史をたどるコースでした。
戦災を免れた須田町周辺では昭和初期に建てられた歴史的建造物が今もなお現役で使用されており、まるで当時にタイムスリップしたかのような風情を味わうことができました。旧万世橋駅跡ではかつてのプラットホーム跡を電車がすり抜けていくのが見られ、鉄道ファンにはたまらないスポットです。
街並みや駅の跡地など東京にもまだこんな素敵な場所が残っているのだと改めて感じさせられるひとときでした。
街歩きの後、いよいよお楽しみのビール会です。
会場は、旧万世橋駅跡マーチエキュート内の「常陸野ブルーイング・ラボ」。
茨城県の木内酒造が手掛ける「常陸野ネストビール」を味わいました。日本酒の酒蔵としても知られる木内酒造が作るビールは、ペールエール、バイツェン、IPA、フルーツビールとヘイジーなど多彩なラインナップです。各自お気に入りのビールで乾杯し、街歩きの感想やビール談義に花を咲かせ、大いに盛り上がりました。

さて、次回は暑さを避けて10月5日(日)を予定しております。次も、また新たな東京の魅力を発見する街歩
きになることでしょう。
どうぞお楽しみに!

文責 益田 聡(理工)

参加者(50音順、敬称略)
遠藤、奥田、向坂、今野、篠原、種村、永田、益田聡、益田あけみ

2025/04/13早慶レガッタ応援会報告

2025年4月13日(日)隅田川で第94回早慶レガッタが開催されました。

54ら会では、例年どおり、54ラン会の隅田川テラスランとレガッタ観戦を予定していましたが、生憎雨の予報は前日になっても覆らず。仕方なしに、対抗エイトの応援だけとなりました。

14:00過ぎから、雨にもかかわらず、17人の54ら会応援団が、桜橋近くの墨田区側に三々五々集合しました。すでにオンラインでレースを観戦し、女子の35連勝と、この数年負けが続いていた第二エイトの勝利を見ていたので、俄然応援に力が入りました。

15:00スタートのやり直しがありましたが、スタート直後から早稲田艇がぐんぐん飛び出し、言問橋に見えてきたのは早稲田のみ。余程のアクシデントがない限り勝利を確信し、見事5艇身差で優勝しました。

なんと久々の完全優勝!!おめでとうございます。

祝勝会は吾妻橋「金の炎」のビルにあるフラムドールで。美味しいアサヒビールで祝杯をあげました。(櫻井直子記)

参加者

岡野勝 系野力 向坂真弓 櫻井直子 首藤典子 
住吉環 田角成人 種村隆久 戸叶哲 中村敏昭 
長坂裕 番平均 日比野悦久 平野伸一 福島碧 
福田光洋 益田聡   

2025/02/28第20回読書会報告

第20回冬のオンライン54ら読書会 2025.2.28

【参加者】

篠原泰司(一文)、鈴木伸治(商)、石河久美子(一文)、
露木肇子(法)、首藤紀子(一文)、山口伸一(理工)、
仁多玲子(商)、前田由紀(一文)、斎藤悟(社学)、
宮田晶子(政経)(以上10名、敬称略、順不同)

立春を過ぎて強力な寒波が襲来した2月でしたが、読書会当日は春を思わせる暖かな日でした。そんな夜に視聴のみの方を含め、10人の方に参加いただき、今回もさまざまなジャンルの本を持ち寄って本への思いを語りあいました。

以下、皆様から寄せられた紹介文ですが、文体などは統一いたしました。

なお、これまでの 読書会報告集Book List、もご覧いただけます。

〇篠原泰司(一文)

『昭和問答』 田中優子・松岡正剛、岩波新書

この「昭和問答」のあとがきが松岡正剛の絶筆になった。

あとがき1を田中優子が書いたあと、松岡正剛はあとがき2を書いた。そしてその原稿を脱稿したあとまもなく松岡は急逝したということだ。

昭和についてはいろいろと読んできた。それでもこの二人の挙げてくる視点や論点にはいままでにないものを感じた。とても面白く読んだ。

新書の帯に書かれた田中優子の松岡正剛に対する弔辞の言葉が印象的だ。「この本の刻まれた一つひとつの言葉の中に、私は次に行く光のかけらを、探し続けている。」

『青い壺』有吉佐和子、文春文庫

「昭和問答」の中で田中優子が有吉佐和子をとても高く評価しているように感じたので読むことにした。まずは「青い壺」。

折しもNHKの「100分で名著」で取り上げられたのがきっかけでベストセラーになってしまった。青い青磁の壺が幾人もの人物の所有を経ていく話なのだが、それぞれの人物にまつわる話がまさに昭和的な習俗や精神などの匂いを強く発散させていて、昭和を感じるならこの本しかないという感じの本だ。

『一の糸』 有吉佐和子、河出文庫

「昭和問答」の中で田中優子が一押しに推薦している有吉佐和子の小説。一人の文楽の天才的な三味線引きを支える女性の一代記である。古典芸能に対する深い造詣はさすがであるし、文体の堅牢さと構成力はさすがとしか言えない。それにストーリーのバランスをとった展開の仕方には読者に安心感を与えてくれる。これが有吉佐和子がいまだに支持される理由の一つなのかも知れないと思った。

〇鈴木伸治(商)

『半導体戦争−世界最重要テクノロジーをめぐる国家間の攻防』クリス・ミラー ・千葉敏生(訳)、ダイヤモンド社

現在のデジタル世界を生み出してきた半導体産業のことが知りたくて良い本を探していたところ見つけたのがこの本。

本書は、アメリカ、ソ連、日本、東アジア(台湾・韓国)、中国などの歴史的文書の調査や、百人を超える科学者、技術者、CEO、政府官僚へのインタビューに基づき、軍事力のバランス、世界経済の構造、そして国際政治の形を決定づけ、私たちの暮らすデジタル世界を特徴づけてきたのが半導体であることを明らかにしている。

半導体の発展は、私が当初想定していた大企業や消費者(産業として)だけでなく、野心的な政府や戦争の要請によっても、というよりもより現代では後者の方によって形づくられてきていることが分かる。

その一例が、アメリカとの安全保障関係を強化するための戦略の一環として1960年代から意図的に半導体サプライ・チェーンの中に身を置き、世界で唯一シリコン上に118億個の微細なトランジスタを刻み込んだiPhone12のA14プロセッサ・チップを製造することのできる台湾積体電路製造(TSMC)を育てた台湾である。

〇石河久美子(一文)

『宙わたる教室』伊予原新、文芸春秋

定時制高校の科学部が、学会の高校生部門で入賞を続けJAXAの「はやぶさ」の開発にも貢献した実話に着想を得たフィクション。昨年秋NHKドラマ化され好評を博した。著者は、地球惑星科学の研究者から小説家に転じた経歴の持ち主。科学の知識を小説に取り入れた作風で今期の直木賞も受賞。

それぞれままならぬ人生を送り定時制にやってきた10代から70代までの生徒たちが、元研究者の教員と出会い、火星の重力下でクレーターを再現するという未知の研究に挑む。その過程で、自分たちの潜在能力に気づき、可能性を広げ自信を取り戻していく様子が生き生きと描かれる。研究の楽しさが伝わってくる清々しい小説。

〇露木肇子(法)

『ハイジ神話』ジャン=ミシェル・ヴィスメール、晃洋書房

最近BSでドキュメンタリー「スイスの象徴となった少女」を観て、「ハイジ」の変わらぬ人気と、作者シュピリ(1827~1907)がうつ病だったことを知り、「赤毛のアン」の作者モンゴメリと同じく、内なる情熱と社会的立場のギャップに苦しんでいたのではないかと考えた。その後見つけた本著によると、シュピリの父は病院経営者、母は宗教詩人、夫は政治家で忙しく、シュピリは幼少時より孤独で、創作に救いを求めたようだ。

 本著読了後「ハイジ」のほぼ完訳版(結構長い)を読んでみたところ、自然描写や詩の美しさ、ハイジのキャラクターや愉快なエピソードに魅せられた。

なるほど絵本にも映画にも、アニメにもなるわけだ。

 これらの魅力は「赤毛のアン」にもみられるもので、シュピリの約50年後に生まれたモンゴメリも、「ハイジ」を読んでいたことが窺える。

 ジェンダーに苦しむかつての女性作家達が生み出した物語は、世紀を越えて女性をジェンダーから解き放つ。

〇首藤典子(一文)

『花散る里の病棟』帚木蓬生、新潮文庫

四代続いた医者の家の物語。初代の野北保造は明治時代の終わり、九州帝国大学医科大学を卒業後公立病院副医院長につき、35歳で開業医となる。当時多かった回虫の治療で虫医者と呼ばれていたが、50歳の時胃潰瘍で死去。

その息子の野北宏一は、中学生の時に父が亡くなった為、苦学の末、九州医専に入学。短期現役軍医候補生に応募し、1943年にマニラの兵站病院で任務に就く。ジャングル内を逃げ惑いながら米軍の捕虜となる。手帳に克明に年月日と戦況を記載する。終戦直後、上官が高熱の為死去。遺品を手渡すように頼まれ、復員後、上官の妻の元を訪れる。尊敬していた上官のようになろうとその妻と翌年結婚する。戦地では栄養失調やマラリア等による病死が戦死者よりも多かったということに驚き、終戦直後、あと少しでの帰還を目前に果てた方達の無念を思うと心が痛む。

三代目は市立病院勤務の内科医だが、元従軍看護婦だった患者から終戦前後の朝鮮での話を診察の度に聞き、当時の様子に思いを巡らせていたが、終戦直後に厚生省引揚援護局直轄下で、引揚途中心ならずも妊娠させられた女性達の堕胎処置を隠密裡に行い郷里に帰したと聞き、その患者と共に水子の供養祭に行くことにする。

四代目は米国で腹腔鏡肥満減量手術を学んだ外科医だが、コロナパンデミックの中、習得したスキルを生かすことなく、逼迫した医療現場でコロナ感染患者の対応に明け暮れる様子が描かれ、ついこの間のことだが、改めて大変な時代だったと思い返してみる。

医師により描かれた作品に引き込まれるのは、命のやり取りの現場が実体験にしろ、聞いたことにしろ、切羽詰まった現場の様子が生々しく伝わってくるからであると思う。

医師を代々継がせ続ける家系の大変さを知る俳優の医家五代目の佐野史郎氏の説得力ある解説文も然り、著者の綿密な取材に感服する。

〇山口伸一(理工)

『檜垣澤家の炎上』永嶋恵美、新潮文庫

1964生まれの永嶋恵美氏の初長編。横濱で回船業を営む檜垣澤家の主人が亡くなり、幼くして引き取られた妾の子が、歳の離れた親族や姪、使用人などの人間関係の中で権力を手に入れる物語。大正の回船問屋の商売や関東大震災の悲惨な状況が詳しく描かれ、犯人の動機も謎解きも十分に納得できる2024年を代表する佳作。

〇仁多玲子(商)

『あしたはきっと大丈夫』高尾美保、コスミック出版

今回の読書会で、私は、産婦人科医である高尾美穂さんが書かれた「あしたはきっと大丈夫」という本を紹介した。高尾美穂さんは、NHKの朝イチによく出演されて、ヨガを披露したりする産婦人科医です。とんがり頭で、名前は知らなくても、見たことはある方は多いと思う。高尾先生が、女性、特に若いこれからの女性に、これからの生き方をアドバイスする本で、一つひとつ解説しているので、とても読みやすい。例えば、「なりたい自分をイメージしたら行動に移す」という項目で、自分はこうなると強く思い、そんな自分に近づいていくために具体的な行動や努力を積み重ねていくことで、理想を現実にしていくと語っている。若い女性だけでなく、今の年齢の私でも、あてはまるのではないかと思う。

〇前田由紀(一文)

『旅人 ある物理学者の回想』湯川秀樹、KADOKAWA

「ただ、私は学者として生きている限り、見知らぬ土地の遍歴者であり、荒野の開拓者でありたいという希望は、昔も今も持っている。」この自伝は、有名になるまでの20代で終わる。悩める若き研究者の心の軌跡が描かれ、内向的な性格や父親との確執等親近感がある。戦後まもなく彼がなぜ日本人初のノーベル賞受賞したのか、その謎に迫ることができる。

『河合隼雄 物語とたましい』河合隼雄、平凡社

河合隼雄は、日本におけるユング心理学を代表する学者である。物語に注目し、日本神話では対立する神が適当なバランスをもって共存している中空構造と位置づけ、西洋の中心統合型と対比させている。スイスでのユング分析家資格試験において、指導教官と筆者が対立するところが、特に興味深い。

「花嫁はどこへ?」監督キラン・ラオ、インド映画 

 二人の花嫁が満員電車で同じ赤いベールを被っていたことから取り間違えられ、離れ離れとなってしまう新婚夫婦のドタバタ喜劇。従順で健気な花嫁と自立を願うもう一人の花嫁が対照的に描かれる。インドの社会背景が良く理解でき、英米以外の映画をもっと観たいと思えた。

〇宮田晶子(政経)

『日本語が滅びるということ』 水村美苗、筑摩書房

 米国発のマネジメント誌の編集・出版という仕事に携わっている私からすると、カタカナという便利な文字があるがために、私たちの取り巻く言葉がどんどん英語に侵食されているように思われてならない。ここは日本語にしたい、と思っても、カタカナにしないと「界隈」の方には「わかってない」と言われてしまう。明治維新の開国で「西洋の衝撃」を浴び、豊かな近代文学を生み出した日本語だが、インターネットの登場とグローバル化の進展のなかで、その未来が危うくなっている。2008年に刊行された本だが、人工知能の急速な発達もあり、本書で提起された問題がますます差し迫っているように思われた。

*次回は、前田由紀さん(一文)の司会で、2025年5月23日(金)第21回冬の54ら読書会を予定しています。

2025/02/06ボウリングの集い報告

2月6日(火)14時よりビッグボックス八階にて第15回ボウリングの集いが高橋正明さんの初参加で7名により開催されました。

出だしは、鈴木さんのダブル、高橋さんの連続スペアとスタートダッシュしましたが、後が続きません。その隙をついてハンデに恵まれた岡野が余裕で、ゴールテープを切りました。準優勝は2ゲーム目にダブルを出し追い上げた秋田さんが獲得し、3位には2ゲーム目に自己最高スコアをマークした本多さんがゲットし、女性陣が奮闘いたしました。団体戦は白熱した戦いとなりましたが、僅差で、秋田、大和田ペアが栄冠を勝ち取りました。懇親会は石庫門にて餃子により健闘を讃えあいました。次回は6月を予定しておりますので、皆様の参加をお待ちしております。

高橋さんのコメント
初参加でしたが、ホント楽しい1日でした。練習した割には下手くそでした。次回はもう少しスペアを取りたいと思います。

参加者、秋田、大和田、鈴木、高橋、藤原、本多、岡野の七名

2025/03/08ビール会報告

3回ビール会(街歩き付)の報告

202538日(日)、伊勢角屋麦酒八重洲店において、
3回目の「ビール会(街歩き付)」を開催しました。

今回のテーマは、
伊勢から世界へクラフトビールを送り出している「伊勢角屋麦酒」と
お江戸日本橋の街歩きです。
総勢10名のちょうど良い規模感での開催となりました。
心配していたお天気の方も、ビール会会場に着くまで何とかもってくれました。

日本橋で集合し、日本橋をじっくり眺めて、室町の裏通りを歩き昔からある黒文字のお店を覗き、三井本館、三越本店でのパイプオルガンの演奏の鑑賞、その後日銀と貨幣博物館を訪ねました。重要文化財オンパレードです。日本橋界隈、首都高が無くなれば、見事な景観が蘇るのでしょう。途中にある地方のアンテナショップにも興味をそそられました。

街歩きを終え、いよいよ目的のビール会です。今回のビールは、ペールエール2種、バイツェン、IPAとヘイジーが準備されています。日本酒もさすが伊勢神宮のおひざ元だけあって美味しいお酒が取り揃えられています。

先ずは、ペールエールで乾杯し、二杯目はバイツェンが人気のようでした。
ビールを飲みながら、美味しい日本酒を見つけた54ら面々は、ビールの後は次から次へと日本酒を注文。高齢者なのによく飲むね。

よくあるクラフトビールのお店は日本酒を置いているところはまれで、さすがに伊勢角屋麦酒のお店だなと感心しました。

美味しいビールと美味しい日本酒のコラボ、これぞ美味しい日本の文化です。
日本酒の無形文化遺産登録、納得のわけです。

さて次回は68日(日)を予定しています。どこのビールを飲みに行こうかな。楽しみにお待ちください。

2025/02/17新春ゴルフ会報告

54ら会ゴルフを楽しもう会 新春ゴルフの報告

2025年2月17日(月)、中山カントリークラブにおいて、恒例となりました
「54ら会ゴルフを楽しもう会 新春初打ちゴルフ」
が開催されました。
54ら会主催ゴルフで初の平日開催です。
仕事の都合で参加できなかった54らが残念ながら相当数いました。
当日は、数日前の大寒波と打って変わって、季節違いの穏やかな暖かい天候にめぐまれました。
スタート前の集合写真、まるで春の青空です。
初参加の二名を加え総勢18名が集まることができました。
毎回、仲間が増えることはとても嬉しいことです。
今回初参加の一人は、ゴルフ以外の54らイベントにも顔をだし始めたとか。ますます嬉しいですね。
プレーの方は、慣れない高麗グリーンに手をやきましたが、ミドルホールでイーグルを獲得するスーパーヒーローが現れるなど、楽しく、気持ちよくラウンドをすることができました。
いつも54らゴルフは楽しい。
プレーの後は、最寄りの八千代緑が丘駅近くの焼き鳥屋さんで新年会です。
学生時代の話題、ゴルフの話題、あれやこれや、話は尽きません。楽しい時間はあっという間に過ぎ去っていきます。
次回の再会を誓ってお開きとなりました。

次回は、5/31(土)、土曜日開催予定です。
54らの皆様、初参加大歓迎です。

文責 益田 聡(理工)

参加者(50音順、敬称略)
遠藤辰也、伊井博、石橋純治、大和田秀二、小山田薫、
岸本忠生、系野力、首藤典子、関口研、高橋正明、
寺内千賀子、中村敏昭、橋本裕幸、早川一秀、
平野伸一、益田聡、森元晴一、山口勝義

2024/11/22秋の読書会報告

第19回秋のオンライン54ら読書会                       2024.11.22

【参加者】

篠原泰司(一文)、福島碧(社学)、沖宏志(理工)、露木肇子(法)、
加藤透(理工)、石河久美子(一文)、鈴木伸治(商)、
首藤典子(一文)、山口伸一(理工)、斎藤悟(社学)、
宮田晶子(政経)、前田由紀(一文)
    (以上12名、敬称略、発表順)

二十四節気によると、この季節は「小雪」。「冷ゆるが故に雨も雪と也てくだるが故也」の意とか。わずかながら雪が降り始める季節となった。今回も多様なラインナップとなった。読書会を始めて丸5年。あっという間であり、毎回の新鮮さは、変わらない。(文体は常体に統一)

なお、これまでの 読書会報告集Book List、もご覧いただけます。

〇篠原泰司(一文)

『板上に咲くMUNAKATA:Beyond Van Gogh』原田マハ、幻冬舎

原田マハによる今年(2024年)3月に出版された小説。伝記ではなく小説なのだが、ほとんどすべてが事実どおりに書かれているようだ。私の好きな画家(版画家)なので、柳宗悦や大原孫三郎などの名前が出てきたり棟方志功の母の話がでてきたりする部分などで、画家の全体像が把握できたのはとてもよかったと感じている。大変感動的に読めた本だ。

『アマテラスの正体』関裕二、新潮新書

突飛な空想や道具立てを持ち込んだ歴史本ではなく、日本書紀や万葉集などを丹念に読み込んだ上での「アマテラス」についての仮説が書かれている。「アマテラス」のことだけではなく「卑弥呼」の存在までに話が及ぶ。この辺りの日本歴史に興味がある方にはぜひ一読をしてほしい一冊である。

『遊郭と日本人』田中優子、講談社現代新書

江戸時代の遊郭という存在を歴史的、文化史的に掘り下げた本。著者の見識にとても感動させられた。江戸時代の遊郭は日本文化をその一角に凝縮したワンダーランドだったのだ。来年の大河ドラマの主人公は江戸の遊郭である吉原の出身であり、吉原で活躍した人物である。2025年 大河ドラマ「べらぼう ~蔦重栄華乃夢噺~」の始まる前に読んでおいてはいかが?

〇福島碧(社学)

『板上に咲くMUNAKATA:Beyond Van Gogh』原田マハ、幻冬舎

今年の4月に、弘前城の花見に家族と行き、何か青森にちなんだ本を読もうと思い、この本を手にとりました。この本は、ゴッホの「ひまわり」に憧れて芸術の世界に入った棟方志功と、棟方を世に出した奥様の話。青森からの帰りの新幹線で、泣けました。青森からは、今も世界中でファンの多い太宰治も出ていて、それは何故?・・青森には、本当に何もなくて、それこそ、何もないからこそ、彼らのように生まれるものがあるのでは?と思いました。

『功名が辻』(一)〜(四)司馬遼太郎、文藝春秋

わずか6万石の掛川城主だった山内一豊を、土佐24万石の大名にした、妻の話。女の生き方として、大いに参考になります(自分では、出来ないけど)。この9月、掛川城へ行き、その豊かでおだやかな土地に癒されました。山内伊右衛門(山内一豊は、小さい頃から伊右衛門と呼ばれていた)のその誠実な人柄や、また、敵を作らない生き方に、惹かれました。ところで、お茶の「伊右衛門」というペットボトルの名前は、この山内一豊にあやかって付けたのかも?と思ったりしました。

『峠』(上)(中)(下)司馬遼太郎、新潮社

人間の生き方についての本、と思いました。越後(長岡藩)の河井継之助の話。河井継之助は、30才過ぎまで、世の中の真理を求め、何もしないでいた人。人間には、何もしないで考える時間が必要、と思いました。今の世の中では、不可能だけれど。また、越後の友人は、とても開明的で、何故か?と思っていましたが、この本を読んで、少し納得しました。

〇沖宏志(理工)

『町内会』玉野和志、ちくま新書

富士通社友会の理事は断った。中国語コミュニティの理事も断った。しかし、広島のような地方都市では、なかなか町内会の理事を断るというわけにはいかず、町内会にかかわることになり、読んでみた本。町内会のメイン機能は共同防衛機能との事。町内会はいわば公共財のようなもので、あると助かるし、いざというときありがたいが日頃からそれを積極的にささえようとは誰も思わない。それは誰かがやってくれれば助かるが、できれば参加したくないもの。

〇露木肇子(法)

『家族終了』酒井順子、集英社文庫

著者は2004年『負け犬の遠吠え』で注目を浴びた、我々より10年ほど年下のエッセイストである。小中高の後輩ということで、時折読んではいたが、ミッション系女子校という温室で育ちながら、なぜ世間の矛盾を敏感にとらえ、辛口で、しかもユーモアたっぷりに切り込んでいく力を身につけたのかを長年不思議に思っていた。その謎が本著によって明らかになった。著者は両親と兄を亡くし、家族が終了したことに伴い、家族の秘密を暴露し、その上であらゆる家族または家族的な関係について思いを巡らしている。
 学問や理論にとらわれない自由でおおらかな発想が魅力だ。選択的夫婦別姓についても筆者は次のように述べている。「苗字は一緒でも家庭内では別居という夫婦と、苗字はバラバラだけれど仲の良いという事実婚カップルを比べると、前者の方がより国益にかなう、という判断を国はしているのでしょう。」共感できることが多くて、楽しく読むことができた。

〇加藤透(理工)

『大地』パール・バック、河出書房 1967 (世界文学全集第34巻)

中国を舞台に、アヘン戦争の頃からスタートする家族3代にわたる大河小説。肥沃でない土地の貧農が主人公で、奴隷女を娶って、物語が始まる。死にもの狂いに働き、アヘンに耽溺する族長から土地を買い取り、しかし子供の世代から親の土地を売却する崩壊過程が始まり、結局無に帰していく。

〇石河久美子(一文)

『堤未香のショック・ドクトリン-政府のやりたい放題から身を守る方法』堤未香、幻冬舎

ショック・ドクトリンとは、テロや災害などショッキングな事件が起きて国民が思考停止している間に政府や巨大資本が過激な政策を推し進める手法。本書では、マイナンバーカ-ド、コロナ、脱炭素が例として取り上げられている。マイナンバーカードに関しては、一つに個人情報を集約する危険性を警鐘するとともに、諸外国のマイナンバー状況についても整理して情報提供している。それによると、名だたる諸外国で日本のような制度を取り入れている国はない。個人情報の取り扱いについて、各国との温度差を感じた。まもなく保険証が廃止になるので、今後を見据えるうえでも参考になる書。

〇鈴木伸治(商)

『人類とイノベーション −世界は「自由」と「失敗」で進化する』マッド・リドレー 著 大田直子訳、NewsPicksパブリッシング(2021年3月3日)

著者は、事実と論理に基づいてポジティブな未来を構想する「合理的楽観主義」の提唱者として世界的に著名で、ビル・ゲイツやマーク・ザッカーバーグらの世界観に影響を与えたビジョナリーとして知られる。本書は、米英でベストセラーを記録している。
イノベーションとは、元々は「技術革新」という意味で使われていたが、現在ではモノ、仕組み、サービス、組織、ビジネスモデルなどあらゆる領域において、従来の常識を覆し、今までにない革新的な考え方やアイデアによって、社会に大きな刷新、変革や新しい価値を生み出すことを意味している。そのため、先進的な企業や先進国で頻繁に使われ目標とされているが、それがどうして起こるのかについての体系的な概念は確立されていない。本書は、その謎に具体的な事例をもとに、自分の(または他人の)発明を有益なイノベーションに変えたイノベーターたちの成功例や失敗例など、それが起きた経緯から探究している。事例は、蒸気機関や検索エンジン、ワクチンや電子タバコ、輸送用コンテナやシリコンチップ、キャスター付きスーツケースや遺伝子編集、数字やトイレなどである。

『草の花』福永武彦著、新潮社(福永武彦全集 第二巻 小説2)

研ぎ澄まされた理知ゆえに、青春の途上でめぐりあった藤木忍(同性)との純粋な愛に破れ、藤木の妹千枝子との恋にも挫折した汐見茂思。彼は、そのはかなく崩れ易い青春の墓標を、二冊のノートに記したまま、純白の雪が地上をおおった冬の日に、自殺行為にも似た手術を受けて、帰らぬ人となった。まだ熟れきらぬ孤独な魂の愛と死を、透明な時間の中に昇華させた、青春の鎮魂歌。福永の作品の中で最も読者、それも年若い読者に愛されたもの。

〇首藤典子(一文)

『菜食主義者』ハン・ガン著、きむ ふな訳、クオン

ノーベル文学賞受賞作品。最初の章では、語り手が普通のサラリーマンで、特に目立ったところもなく、平凡な女性と結婚し平穏に暮らしていたが、ある時妻がおかしな行動をとるようになり、肉を全く食べなくなる。そして夫用に買いだめしていた肉をすべて捨ててしまい、食卓に肉料理が出なくなる。困った夫が妻の両親、姉に相談したことで、妻の父親が無理やり肉を食べさせようとした直後手首を切ってしまい、精神を病んでいるということで入院することになる。章が変わると語り手が妻の姉の夫、妻の姉と代わっていき、それぞれの視点で語られるようになる。病状が進行していくにつれ、悩む周囲の人間を巻き込みながら、また女性により引き起こされる事象で周りの者たちの生活事態が思わぬ方向に変化していく様が克明に描かれ、家族、親族関係が崩壊していく。よくあるベジタリアンであると気軽に考えるなかれ、と警告を発しているようにも思われる作品。

『滅びの前のシャングリ・ラ』凪良ゆう、中央公論新社

前に取り上げた「菜食主義者」と前後して読んだ際、作品の構成が似ているので取り上げた。最初の章で登場した人達が、章が変わる度に語り手となって別の側面から登場する。作品の内容自体は、若者主体で軽快に展開していく作品。

『流浪の月』凪良ゆう、東京創元社

 女児誘拐事件として報道された当時小学4年生の少女と、捕らえられて医療少年院に送られた、当時19歳の大学生の話。15年後に再会し、当時は説明することが出来なかった少女時代の報道が誤っている、「事実と真実は違う」、誘拐ではなく少女自身がついて行きたかったのだと悟る。大人になった彼女がそのように述べても、第三者は、特殊な状況下で長い時間を共に過ごすうちに、犯人に対して被害者が好意を持つストックホルム症候群であると指摘する。この話では、他人が何を言おうがずっと一緒にいたい、―――そのような気持ちになるまでは他の男性と交際したり、また犯人とされた男性も他の女性と交際したり、それぞれの経験をした上でやはりこの人が一番とお互いに思っているが―――周りが二人の関係性に気付き始めると「今度は何処に行こうか」とその場から離れ流れていくということを繰り返していくというエンディング。「誘拐事件」として報道されたが為に本人達の気持ちとは裏腹のストーリーが展開しそれが事実として認められてしまい、女性が望まないことは何もしない人なのに社会的制裁まで受けてしまう男性。しかし、二人で自分達なりの幸せを求めていくことをあきらめてはいないことが救いであろうか。

〇山口伸一(理工)

『鬼の筆』春日太一、文藝春秋

脚本家、橋本忍は黒澤明の「羅生門」でデビューし、「生きる」、「七人の侍」、「八甲田山」、「八つ墓村」などのヒット作を手がける。ヒット映画の請負人で、「砂の器」では原作にはない日本縦断の旅を挿入、また、邦画では初の単館上映を実現し、大成功を収める。さらにプロダクションを作り、才能ある監督やスターを集め大作を制作し、映画の斜陽時代を支えた。しかし、晩年の「幻の湖」で失敗する。映画ファンでなくとも興味深い一冊。

〇斎藤悟(社学)

 今回は思いも掛けなかった町内会や故郷談義が楽しかったです。町内会の存在や機能は地域に依って異なると思いますし、何処を故郷と思っているのか、故郷とは何処を云うのかに付いて皆様にお聞かせ頂ければと思って居ります。長く考えさせられているとても興味のある問題です。ジェンダーの話も同様です。宜しくお願い致します。

〇宮田晶子(政経)

『大阪』 岸政彦・柴崎友香、河出文庫

故郷を出て大阪に住み着いた社会学者の岸さんと、大阪を出て現在は東京に住む作家の柴崎さんのリレーエッセイ。生活史研究の岸さんに興味を惹かれて手に取った本だったが、柴崎さんパートのほうが面白かった。大阪にいた頃は、家族との葛藤とか、友人関係の悩みとかいっぱいあったようなのに、それでも生まれ育った大阪という街に対する愛情が感じられた。私にはそのような感情を抱ける街がなく、そのことがとても羨ましく思われた。

〇前田由紀(一文)

『異邦人』カミュ、新潮文庫

勤務校の高校生が企画した『異邦人』読書会に参加した。なぜ書き出しが「母さん」ではなく「ママン」なのか、なぜ母親の死に冷淡な態度をとったのか、なぜ撃ったのか、タイトルは、なぜ異邦人なのか、なぜこんな判決になったのか、司祭をなぜ追い出したのかいろいろな疑問について話し合い、フランスの歴史も振り返った。予想をはるかに超えた充実した読書会となった。

『日本辺境論』内田樹、新潮新書

 日本人論にかねてから興味があり、2009年に出版された本書も当時お気に入りの新書となった。今回、生徒に紹介するために再読し、新たな魅力を発見した。常にどこかに「世界の中心」を必要とする辺境の民であり、きょろきょろしてしまう日本人の情けない習性を思い知らされるが、そのことに気づき、そこを強みとすることもできるのではないか。既存の日本人論を総括して読者に明示する「お掃除本」であるという表現も見事だ。

映画「PERFECT DAYS」ヴィム・ヴェンダース監督(ドイツ)

 役所広司が演じる一人暮らしの渋谷の公衆トイレ清掃員。ルーティンの日常が丁寧に描かれる。職人気質で、人知れず隅々まで磨き上げる。車中で聴く好きなCD。行きつけの飲み屋、銭湯、古本屋100円均一文庫の読書。最低限の質素な生活だからこその豊かさがある。自由と寂寥が入り混じるが、「こもれび」という日本語を英語で紹介しているのは日本にしかない表現なのだろう。出てくるトイレがオシャレだったのも印象的だ。

*次回は、宮田晶子さん(政経)の司会で、2025年2月28日(金)第20回冬の54ら読書会を予定しています。

2025/01/12早稲田駅伝参加報告

1/12 (日) 早稲田駅伝 IN日産スタジアムにて
総勢 出走者8名、応援者1名 で参加しました。
多少の日差しがありましたが、非常に寒い1日でした。(昨年に比べチョット暖かも)
8名で臙脂の襷をつなぎ無事完走出来ました。
結果は 2:06:21  稲門会の部 16/20でした。
各々 設定タイムをクリアー出来満足しました。
出走を今回限りにしたいとの声もありましたが、健康寿命を延ばす為にも継続する事を誓い合いました。