2022/11/25 第11回秋の読書会報告

今回は、混迷を極める世相を反映して、主に全体主義や社会思想、
安全保障の自衛大学校、ウクライナの歴史を振り返る社会科学系本
が紹介された。他には、独学のススメ、アメリカの人気作品、沖縄
レシピ本、芸術品のような絵本、時代小説と多彩な本について語ら
れた。通常より少ない人数となったが、全員の参加者にゆったり
お話していただける読書会となった。

参加者の皆さんは、ご覧の通りです。(発表順)

沖宏志さん、篠原泰司さん、仁多玲子さん、鈴木伸治さん、高平潔さん、
露木筆子さん、宮田晶子さん、前田由紀 (8名)

全体主義の受け入れてしまう大衆(沖)
⇒独学のススメ・自然描写の美しいアメリカベストセラー(篠原)
⇒沖縄料理の醍醐味(仁多)
⇒社会思想の歴史を振り返る(鈴木)
⇒初参加今回は視聴のみ。ラグビー部出身(高平)
⇒絵本の色彩の素晴らしさ(露木)
⇒国の安全保障を担うエリートたちの防衛大学校(宮田)
⇒ウクライナ侵攻から露呈する様々な問題提起と高3生による京都文学賞受賞作品である瑞々しい時代小説(前田)

次回 第12 回 54 ら読書会
2023年 2 月24日(金)1 9:3 0 より/ホスト 宮田晶子さん(政経)
※11 月、2 月、5 月、8 月の第4金曜日に開催しています。

なお、これまでの 読書会報告集Book List、もご覧いただけます。

1.沖 宏志(理工)

『悪と全体主義』 仲正昌樹 (NHK出版新書)

主にナチスを題材として、全体主義がどのように育ち、どのように災いを人類にもたらしたかのハンナ・アーレントの主張を解説した本である。全体主義を受入れてしまう悪い意味での「大衆」を問題としている。最近、一連のトランプ本やプーチン本を読んでいて、全体主義は今、目の前のある脅威で他人事ではないと感じる今日この頃である。
 悪い意味での「大衆」を説得するのは言わずもがな、自分自身が全体主義の手法にたぶらかされないのですら、おそらく思っている以上にずっと難しい。なんせ、こんな本を書いている人が統一教会に入っていたわけだから。

2.篠原 泰司(一文)

『独学の教室』読書猿、吉田武、ウスビ・サコ他、インターナショナル新書107、集英社

 独学(独りで学ぶこと)の魅力、意義、そしてその方法を探った本。英語、美術、読書、ノート術、漫画、数学、物理学はては冒険まで、14人の独学者による多彩なジャンルに関する寄稿がまとめられている。それぞれの寄稿が15~18ページと短く、通勤電車の中で一つの寄稿を読み終えることも可能。興味のあるジャンルや気になる寄稿者の文章から読んでみれば、これからの人生を豊かにしてくれることは間違いのないことだと思う。

『ザリガニの鳴くところ』ディーリア・オーエンズ、友廣純訳、早川書房

 この読書会でも、すでに何名かの人が推薦していた「ザリガニの鳴くところ」だが、私自身興味を持ち本(原書も)も購入していたが、2年間読まずに積んでおく状態にしていた。ところが、2022年11月18日に映画が公開されるという情報を得て急遽読み始め、映画公開の日時に合わせて読み終えた次第だ。

 11月24日には映画を鑑賞してきた。予想していたことだが、原作の内容を2時間の上映時間の枠に収めることには無理があり、内容的には物足りなさや消化不良の感は否めなかった。できれば一話が1時間の枠で10話ぐらいのテレビドラマシリーズにしてほしかった。それでも、さすがに映画であって、自然や人物の描写には大画面の映画ならではの深さや美しさを感じた。この「ザリガニの鳴くところ」という小説の本当の面白さを知るには、やはり小説を読むべきである。

3.仁多 玲子(商)

『NHK連続テレビ小説 ちむどんどんレシピブック』オカズデザイン、NHK出版

今回、私は、NHKの朝ドラだった「ちむどんどん」のドラマの中で使われた沖縄料理の作り方を教えた本を皆さんに紹介した。ネットで見つけて、面白そうなので、1冊購入した。

有名な、ゴーヤチャンプルーはもちろんのこと、ラフテー、ゆし豆腐、にんじんしりしりー等、沖縄料理は、本当にヘルシーで、作り方も簡単。とりあえず、私は、ゴーヤを買ってきて、ゴーヤチャンプルーを作り、とても、美味しかったです。

皆さんも、沖縄料理にご興味のある方は、ぜひ一冊買って、ご家族に食べさせてください。

4.鈴木 伸治(商)

『社会思想の歴史 マキアヴェリからロールズまで』坂本達哉、名古屋大学出版会

 ソ連の崩壊からロシアのウクライナ侵攻、中国の社会主義市場経済の進展から米中対立、米国の経済成長の中でのトランプ旋風から国内の分断、EU拡大の一方でのブレグジットなど、最近の世界は、これまでになく政治や経済に不安定な状況が生まれつつある。

 その背景を知る上での一助となる本がないかと探した結果、見つけて現在読んでいる本が今回ご紹介する本。本書は、ルネサンス、宗教改革からソ連・東欧の社会主義体制の崩壊まで、西欧近代500年間の社会思想の歩みが概観されている。そして、現代人の課題でもある議会制民主主義と資本主義を基盤とする社会における諸問題と取り組んだ歴史が描かれている。

 5.高平 潔(法)視聴

 本日は、初参加受入頂き有難うございました。本日は、視聴のみの参加となりましたが、大変な刺激となりました。皆様の興味の広さと博識の深さに触発されました。学生時代(ラグビー部在籍)に、ボールを蹴ったのと同じ位頭を蹴られているので正常な作動に自信がありませんが、皆様と読書を通した認識交換出来ればサンデー毎日となった私には最高の機会です。今後とも宜しくお願い申し上げます。

6.露木 筆子(法)

絵本『スイッチョねこ』文/大佛次郎 絵/朝倉摂 青幻社

絵本を収集して45年になる。集める基準は色の美しさである。その中で最近感動したのがこの絵本だ。朝倉さんは日本画家・舞台芸術家で1922年生まれ。今年は生誕100年なので、70年代発行されたこの絵本が復刊されたようだ。子猫の愛らしい童話は、鮮やかな色の魔力で、幻想物語に変わっていて、読む人を圧倒する。

絵本『カッコウが鳴く日』『わたしの好きな場所』『秋は林をぬけて』小泉るみ子作・絵 ポプラ社

 作者は1950年北海道生まれ、早稲田の文学部を卒業してから絵本作家としてデビューした。たくさんの絵本を出しているが、紹介するのは、北海道の四季を、厳しさを込めた深味のある色彩で見事に表現した、画集のような絵本だ。その他民話を題材にした絵本も魅力的だ。

7.宮田 晶子(政経)

『防衛大学校—知られざる学び舎の実像』國分良成(第9代防衛大学校長)、中央公論新社


世界情勢が不安定な中、防衛費増額が検討され、自衛隊への注目も高まっている昨今、自衛隊幹部を養成する防衛大学校に興味を持った。朝6時にラッパで起床、勉学に加えて訓練に勤しみ、外出もなかなか自由にできないという防衛大学校生の生活は、現代の若者のそれとはかけ離れている。ここに入学し、将来の自衛官を目指す方達(並びに送り出す親御さんも)の覚悟は大変なものだと思った。学校の歴史などの記述も興味深かった。

8.前田 由紀(一文)

『中学生から知りたいウクライナのこと』小山哲・藤原辰史、ミシマ社

京都大学のポーランド史と食と農の現代史が専門の歴史学者が、「中学生に立ち返って、大人の認識を鍛え直す」という意味を込めて執筆した書。歴史が繰り返されるのは、忘却にあり、歴史学者の資格は、「忘れない執念」であるという。ウクライナ侵攻による、①国際法違反での国連の限界、②ロシアの人々や文化の排除、差別の危険性、③NATOとロシアの善悪二元論の危うさ、④大国によって分裂と統合を繰り返してきたウクライナの歴史、⑤情報戦の国際報道の偏り、⑥日本の中立のあり方など多くのことを考える機会となった。

『ちとせ』高野知宙、祥伝社

 京都文学賞受賞作品。高3生による時代小説。時は、明治初期。幕末から変わりゆく京都を背景に、病により徐々に視力を失っていく孤高の少女が三味線を必死に修行し、周りの温かい人たちに支えられ成長していく青春小説。車屋の御曹司との淡い恋模様も切なく、瑞々しい。将来の不安、失望を抱える思春期から凛として自立して「闇に浮かぶ浄土」への境地に立つ過程の描写が同年代でもある著者と時代を超えてリンクして実にリアルである。

 

2023/2/4 ボウリングの集い

久し振りのビッグボックスでのボウリングの集いを
下記要領で開催いたします。
コロナ禍で運動不足の皆様、
ピンを倒す爽快感を味わいながら
ストレス発散をいたしませんか?

日時:2月4日(土)15時
場所:高田馬場グランドボウル(ビッグボックス8F)
会費:6500円 (2ゲーム代、靴代、懇親会代)
懇親会は16時半頃よりビッグボックス内「わん」で2時間飲み放題

参加申し込み締め切り
12月31日

担当:岡野(理工)

2023/1/31,2/28 観劇会

☆★☆ 観劇会:星組 ☆★☆
「ディイトリ~燭光に散る、紫の花~」
「JQGUAR BEAT」
https://kageki.hankyu.co.jp/revue/2022/syayounokuninorusudan/index.html

◎令和05年01月31日(火)18:30 一般公演

☆★☆ 観劇会:花組 ☆★☆
『うたかたの恋』
『ENCHANTEMENT(アンシャントマン) -華麗なる香水(パルファン)-』
https://kageki.hankyu.co.jp/revue/2023/utakatanokoi/index.html

◎令和05年02月28日(火)18:30 一般公演

特に団体行動はいたしませんが、お近くの席で観劇します。
チケットは【数日前】の郵送となります。現地集合、現地解散です。

参加費(S席+諸経費)の他に、簡易書留郵送費¥500/1件
振込先は、チケット送付時にお知らせいたします。

以上、よろしくお願いいたします。

担当:山口桂子

申し込みの際には、ご希望の公演名、日時を、問い合わせ欄に記入ください。

2023/1/28 新年初打ちゴルフ(定員に達しました)

ゴルフを楽しもう会から、新年初打ちゴルフ会のご案内です。

2023年1月28日(土)
中山カントリークラブ
 〒276-0007
 千葉県八千代市桑橋(そうのはし)1299番地 
 TEL47-459-2141 / FAX047-450-3321
10:06 ティーオフ
料金 18,500円 昼食付き
集合 東葉高速鉄道 八千代緑が丘駅 
   8:50発 のクラブバスに乗ります
自家用車の方は現地でお会いしましょう。 
スタート15分前に全員で記念写真を撮ります。

新年会(18:00~20:00) 
八千代緑が丘駅周辺で大体の人数が確定後決定します。

応募締切日  1/22(日)

幹事:中村(理工)、益田(理工)

 

2022/11/5〜6 ゴルフを楽しもう会秋合宿報告

平成25年から開催しており今回7回目の
「54ら会ゴルフを楽しもう会秋合宿」を
恒例の『きぬがわ高原カントリークラブ』で
11月5日から6日1泊2日2プレーで実施しました。
今回は新型コロナウイルス第7波が落ち着き、全国旅行支援が実施され、
特急券が売り切れるなど多くの観光客が出かける中での開催でした。
大切な仲間への感染リスクを避けるため、
抗原検査やPCR検査で陰性を確認した上での参加です。

当初23名の申込みがありましたが、3名のドタキャンあり。
秋田県や兵庫県から来られた方もおり初参加7名を含めて過去最多20名で6組プレー。

電車組16名はゴルフ場への日塩もみじライン途中にある白滝でクラブバスを停めてもらい、紅葉真っ盛りをバックに記念撮影。

車で来る予定の岡野さんの車が日光-宇都宮道路でバーストしてしまい、レンタカーでの到着(事故がなく良かった)。遠藤弘文さんとの2ツーサムプレーで1時間遅れも明るいうちに無事に18ホールを回って来られました。

参加者の日頃の行いの良さが効してか、雲一つない晴天のもとで2日間ゴルフを享受しました。ゴルフ場でも紅葉、そして夜は満点の星空を満喫しました。

12人用ロッジを2棟独占し、栃木和牛のすき焼き・しゃぶしゃぶ、、塩ちゃんこ。残念ながら今回不参加の栄養士 石川由美さん直伝のカレー雑炊でお腹パンパン。アルコールも進み、久しぶりの対面で仲間との時間共有は捨て得難い幸せです。

帰路は鬼怒川温泉駅でSL大樹が見られ、下今市駅からは「東武スページア」コンパートメント3室で究極のプチ贅沢。

楽しい時間はあっという間に過ぎてしまいます。来年の秋合宿を約して浅草駅で解散の秋合宿でした。

次回は恒例の1月で、1月28日(土)名門中山カントリークラブでの集いです。

(中村敏昭 記)

【参加者】石川昌義、遠藤弘文、岡野勝、大和田秀二、片桐孝宏、
北島正一、系野力、櫻井直子、篠崎行良、首藤典子、寺内千賀子
中村敏昭、早川一秀、平野伸一、藤岡敬之、堀尾正明、前田佳子
益田聡、森元晴一、横田敬介

              *:秋合宿初参加メンバー

写真集

2022/11/3 コーラスの集い参加報告

11月3日、新宿文化センターにて
新宿区生涯学習フェスティバル「音楽・コーラスの集い」
が開催され、TKB54シンガーズ有志が「TKB54フレンズ」として参加しました。

なかなかリアル練習がしづらかったこの1年でしたが、
有志でのほぼ月1回の練習を重ねて、1年間の成果を発表することができました。
感染防止からいろいろ制限がつきましたが、
開催が実現し、ステージで気持ちよく歌うことができて、
うれしかったです。

写真アルバムはこちら

ステージの動画はこちら

2022/10/23 稲門祭報告

久しぶりの稲門祭は、好天に恵まれ、54ら亭も盛況。

54ら亭では、
54らどら焼きやTシャツ・ポロシャツなどの54らグッズ販売を行いました。
また、ラグビー部OB会と協力してラグビー部応援コーナーを設けて
ラグビー部の記念グッズ販売を行いました。

稲門祭としては以前より少ない出店でしたが、
同時開催のホームカミングデー式典が分割開催だったためか
人の流れが途絶えず、54ら亭は盛況。
どら焼きは昼頃には完売となりました。

来てくださった方、ご購入くださったかた、
ありがとうございます。

来年は我々1979年卒業は、
ホームカミングデー(HCD)招待年となります。
また、大学で会いましょう。


 

2022/8/26 第10回読書会報告

第1 0 回 夏のオンライン5 4 ら読書会
2 0 2 2 . 0 8 . 2 6
【参加者】
篠原泰司(一文)、首藤典子(一文)、斎藤 悟(商)、鈴木伸治(商)、露木肇子(法)、中村敏昭(理工)、
仁多玲子(商)、日比野悦久(理工)、福島 碧(社学)、前田由紀(一文)、宮田晶子(政経)
(以上11 名、一部参加の方も含む)
54 ら会のオンライン読書会、回を重ねて10 回目を迎えました。
常連の皆様に加え、初参加の方が3人いらっしゃいました。
今回は、本の紹介自体は少なめでしたが、イチエフ(福島第一原子力発電所)の視察に絡めた本の紹介
などもあって、いつもと少し違った趣の会となりました。
以下は当日、挙げていただいた本を発表者のお名前とともに紹介いたします。推しの本について、それ
ぞれ長いコメントをいただいており、それをそのまま(文体は常体に統一しました)掲載しております

なお、これまでの 読書会報告集Book List、もご覧いただけます。


(順不同)。
1 中村敏昭さん(理工)
2022 年1 月21 日に、イチエフ(福島第一原子力発電所)を視察する機会を得た。この視察をめぐって
出会った3 冊の映画と1本の映画を紹介する。
『F u k u s h i m a 5 0』
2021 年3 月6 日に公開された、福島第一原子力発電所事故発生時に発電所に留まって事故対応業務に従
事した約50 名の作業員(通称「フクシマ50」)の闘いを描いた映画。主演は渡辺謙、佐藤浩市、監督は
若松節朗。視察の準備として震災から10 年後の3 月11 日に『Fukushima 50』を鑑賞していた。
『廃炉:「敗北の現場」で働く誇り』 稲泉 連(新潮社)
イチエフの案内役は、経産省資源エネルギー庁で廃炉汚染水対策を担う木野正登さん(木野さんとは会
社のOB であるM 氏との縁で知り合った)。昭和54 年生まれで第二文学部卒業の飯泉連氏は、この本の
第1章には「福島に留まり続けるある官僚の決意」として木野さんとの出会いやエピソードを記してい
る。人事異動希望書には「一生、福島においてください」と書き、国側の広報的立場として、行政が開
催する地元への説明役を引き受け、企業原発事故に関心を持つ人を対象に、原発構内や被災地を巡る活
動をしている。「霞が関から絶対に見えないもの」をたくさん見ている人。
『福島のことなんて、誰もしらねぇじゃねかよ』カンニング竹山(ベストセラーズ)
M 氏は福島に本店を置くS 工業に出向したのだが、新幹線の駅で手にした同書に紹介されている「あね
さの小法師」という飲み屋の常連となり、そこで木野氏と知り合ったのだそう。カンニング竹山氏は東
日本大震災以降、プライベートで何度も福島に入り、たくさんの被災者とも話を交わしてきた。本書は
彼の目を通した率直な福島について綴っている。視察後「あねさの小法師」に行ったら、なんと福島テ
2
レビのロケで当のカンニング竹山氏が来店。幹事長の名刺を渡し、54 ら会の活動紹介もしておいた。
『緊縛』小川内初枝(筑摩書房)
何ともすごいタイトルだが、2002 年の太宰治賞受賞作。M 氏より、この小説のモデルが会社の元社員O
氏(一時PJ で私の下につく)であることを知り、図書館から借りて読む。彼の性癖を垣間見た。
*本の紹介もさることながら、イチエフ視察の様子も詳細にお話しいただき、興味深かったです。
2 篠原泰司さん(一文)
『美は乱調にあり—伊藤野枝と大杉栄』 瀬戸内寂聴(岩波現代文庫)
瀬戸内寂聴43歳から57歳の間に書かれた作品で、アナーキスト大杉栄と「青踏」の編集者伊東野枝
を中心に描かれた群像劇的伝記小説。大杉栄が四角関係の末に神近市子に刺される(日陰茶屋事件)ま
でが「美は乱調にあり」。そして、憲兵大尉の甘粕正彦によって大杉栄、伊藤野枝とその甥橘宗一が虐
殺される(甘粕事件)までが「諧調は偽りなり」。「美は乱調にあり」と「諧調は偽りなり」の間には実
に14年のブランクがある。
97歳の2017年に刊行された文庫版のまえがきに「自分の作品の中で若い人にもっとも読んでもら
いたい作品だ」と寂聴は書き、また、その最後に「この小説を書いて、「青春は恋と革命だ」という考
えが私の内にしっかりと根を下した。」と書いた。
結末に近づくにつれ後日談が知りたくなり、読み終えるのが惜しくなる小説だった。
3 露木肇子さん(法)
『紙の動物園』ケン・リュウ(ハヤカワ文庫)
中国出身でアメリカで活躍するSF作家の短編集である。どの短編も読み応えがあるが、特に書名とな
った「紙の動物園」は感動せずにはいられない。
アメリカ人と結婚した中国人の母親は私達と同世代の1957年生まれ。息子に折り紙で動物を折り、
息を吹き込むと動物は動き出す・・・・・。
短い展開の中で登場人物の思いが胸に刺さり、あまりの切なさで苦しくなる。
SFの世界的な賞3冠に輝く傑作である。
『円』劉 慈欣(早川書房)
これも中国のSF作家の短編集である。
その中の「栄光と夢」を是非読んでほしい。
アメリカとシーア共和国は戦争中で、シーアは経済制裁を受けて国民は飢えで苦しんでいる。そんな中
戦争に決着をつけるため、北京オリンピックを変更し、アメリカとシーアの2ケ国だけのオリンピック
として、勝った方を戦勝国とすることになった。負けても金メダルの数の分恩恵が与えられる。飢えで

ともに練習もできなかったマラソン選手の少女シニは、アメリカの最強女性ランナーに戦いを挑
む・・・・・。
3
他にも奇想天外かつ風刺的な短編がつまった才気あふれる一冊である。
4 首藤典子さん(一文)
『長い道』柏原兵三(小学館)
1968 年、『徳山道助の帰郷』で第58 回芥川賞受賞、著者の祖父日中戦争時代の陸軍中将伊東政喜がモデ
ルになっており、その伊東中将の妹の嫁ぎ先が首藤であるという縁繋がりの作家。『長い道』は後に『少
年時代』の作品名で藤子不二雄A氏により漫画化、山田太一氏脚本で映画化されている。内容としては、
主人公の少年が戦禍を逃れ疎開先で、地元の少年達の輪に入ることが出来ず、悩みもがく日々。唯一の
味方と思っていた地元のリーダー格の少年が実は首謀者であったが、この悩める日々との決別は、終戦
と共に東京へ戻ることによって訪れたところで終っている。小学校高学年の主人公が同じ通学路で登校
する少年達の輪に入れず涙する様子、また疎開先の祖母の家での暮らしや学校の様子、東京に残った家
族から送られてくる本、甘菓子、絵具を家に訪ねてくる少年に与えたりして何とかつながろうとする少
年の姿がいじらしく描かれている。
『小説8 0 5 0』林真理子(新潮社)
引きこもり100 万人の時代、避けては通れない事象の為読んでみたかった作品。引きこもってしまった
らもう誰とも話をしようとはしないが、なんとかその原因を知らなければ解決の糸口がつかめない。
色々と相談したり、実際に行動を起こしたりするのは引きこもった人間ではなく親であると示唆されて
いる気がする。「8050」では父親が引きこもりの原因を、当時の息子の友人に会っていじめがあったこ
とを聞き出し、母親は旧友に相談していたことから、この件で訴訟を請け負ってくれる弁護士を紹介し
てもらう。この弁護士との出会いが運をもたらすが、過去の息子の友人が実際にここまで協力してくれ
るかは難しいのでは。
5 鈴木伸治さん(商)
『ノブレス・オブリージュ イギリスの上流階級』新井潤美(白水社)
イギリスの小説を読んだり、映画やTV ドラマを観たりしていると、爵位のある貴族や「ジェントリ」
と呼ばれる地主を含む上流階級の人物が登場して独特の存在として描かれているが、その独自性の背景
を理解することは難しいものである。
日経新聞の書評欄で、この本を「彼らは実際、その社会・文化の中でどのように形づくられ、語られて
きただろう。私たちが抱く華やかなイメージのどこまでが真実だろう。そんな疑問が氷解する一冊であ
る」と紹介していたことから読んだのだが、この本はそのような本。
『アメリカの病 パンデミックが暴く自由と連帯の危機』ティモシー・スナイダー/池田年穂
訳(慶應義塾出版会)
前記の書評欄の同一紙面に、「世界一の超大国アメリカで、コロナウイルスの犠牲者が最も多いのはな
ぜか。医療ミスにより、生死の淵を彷徨う中で、コロナ禍に遭遇した著者による病床からの緊急レポー
ト!」から興味を持って読んだ本。
アメリカの医療システムや公衆衛生の脆弱さ、人権問題、そして「自由」の真の意味での復活と個人の
4
健康とのかかわり、孤独と連帯の相補についての考察を深め、トランプを頂点とするアメリカの権威主
義体制や医療の世界にも及んでいる経済寡占についての批判を展開している。
個人的には若い頃に読んで強い印象が残っている『自由からの逃走』(エーリッヒ・フロム著/日高六
郎訳)に匹敵する本で、多くの方にも是非読んでいただきたい。
『決戦!株主総会 ドキュメント L I X I L 死闘の8カ月』秋葉大輔(文藝春秋)
日本の上場会社の中には、わずかばかりの株式しか保有していない創業家出身者などが圧倒的な力を握
り、自分の思うままに経営するケースが少なからずある。
このため、そのような創業家出身者などがわざわざ外から招いたプロの経営者を追い出すという事例は
散見され、これまではそのまま収まるのが普通だった。
この本では、追い出されたプロ経営者が泣き寝入りせずに戦いを挑み、勝つことはほとんど不可能とい
われる株主総会で勝利を収めたことが記録されている。
この事例をもとに、コーポレートガバナンス(企業統治)の良し悪しを判断することは全くできないが、
それが如何に難しいことであるかは窺い知ることができるのではないかと思う。
6 前田由紀さん(一文)
『教え学ぶ技術――問いをいかに編集するか』苅谷剛彦/石澤麻子(ちくま新書)
「高校の論文指導に携わっているが、生徒が自分の問いに辿り着くまでが一番難しい。自分にとって切
実な問題とは何か。この本は、オックスフォード大学でのチュートリアルという論文の個別指導につい
て解説している。What do you study?の意味でWhat do you read?と問うオックスフォードの教育。
常日頃から何か引っかかることを、すぐにメモ帳に書き留めておくと、日常が面白くなる気がしてきた。
7 宮田晶子(政経)
『映画を早送りで観る人たち』稲田豊史(光文社新書)
映画や映像を早送りで観る人たちが増えているという。ネットには、ファスト映画やネタバレサイトが
溢れ、少なくとも粗筋や内容は簡単に掴める時代だ。しかし、それで作品を味わうことになるのだろう
か?こうした疑問から出発した本書は、現代社会が抱える問題にまで踏み込む。S N S の発達による同
調圧力(みんなの話題にはとにかくついていかねばならない)、個性がもて囃される故に細かいことま
で取り敢えず知っておきたい、また回り道と失敗をとにかく避けたい、という気持ち。これらが(特に
若い人たちを)倍速視聴に駆り立てている。便利になったけど、余裕がない世の中になっているのを実
感(これは日本の国力とも関係あり?)映画や映像はもはや鑑賞されるものではなく、消費されるもの
のようだ。
5
次回 第11 回 54 らオンライン読書会
1 1 月2 5 日(金)1 9:3 0 より/ホスト 前田由紀さん(一文)
※11 月、2 月、5 月、8 月の第4金曜日に開催しています。

2022/11/25(金) 第11回 秋の読書会

2022年11月25日(金)19:30〜21:00

オンライン読書会、11回目になります。
参加者がお気に入りの本を紹介しあう会です。
各学部出身の参加者により広範囲の本と出会えるのが醍醐味です。
本のみならず雑誌、映画でも大丈夫、また視聴のみの参加もOK。
お一人、5分位で本の紹介をお願いしています。
11月21日までにお申し込みください。
お申し込みの方にはzoom案内メールを差し上げます。

これまでの読書会報告集
これまでのBook List

2022/11/4 ゴルフを楽しもう会 秋合宿

11月5日(土)〜6日(日)

きぬがわ高原カントリークラブ
〒321-2615栃木県日光市五十里字東山722TEL:0288-78-1010

11月5日(土) 
7:30 東武浅草駅発(リバティきぬ105号)
9:35 鬼怒川温泉駅着(クラブバスにてゴルフ場へ)  
10:20頃 ゴルフ場着予定 (準備・早めの昼食バイキング)
11:23,11:30、11:37 OUT・INショットガン5組スタート(スルー)
16:30頃 アップ・クラブハウスで入浴、併設ロッジに移動
18:00頃から 夕食 

11月6日(日) 
7:00頃 朝食 
8:00、8:07、8:14 OUT・INショットガン5組スタート(スルー) 
13:15頃 アップ・昼食・入浴、帰宅準備 
14:15頃 ゴルフ場発 
15:00頃 鬼怒川温泉駅着 
15:32  鬼怒川温泉駅発 
15:55  下今市駅着 
16:02  下今市駅発(けごん42号) 
17:45  浅草駅着(自由解散)

費用:25,260円/人(+飲み代・交通費・夕食ランクアップ)
先着20名とします。 
幹事:中村(理工) 益田 聡(理工)