明海大学客員教授
早稲田大学講師
フリーキャスター(元NHK )
堀尾 正明氏(一文)より総会に向けて特別に寄稿頂きました。
54ら会かー。おれ、群れるのはあまり性に合ってないからなー。
正直言って、最初のうちは、みんなよっぽど暇なんだなー(失礼)と、会の活動を半ば斜めから傍観していた私ですが、いざ、1度参加してみると、意外にも、この会にとても新鮮な思いを抱きました。というのも、大学OB同期の人間の集まりにもかかわらず、学生時代には交流のなかった、新しいユニークな人々と知り合うことができるからです。私は、主にゴルフに参加しますが、みなさん、昔の肩書を脱いで、伸び伸びと自分の「加齢ぶり」を話したり、逆に自慢したりする。まあ、とにかく、よく笑う。ダジャレを言う。受けないおやじギャグを連発する。でもめげずに続ける。ユーモアのある話しをする。思わず、苦笑いさせられる。なぜか、54らにはそういう人が多いのです。学生時代とはまた違った新鮮な感覚。
私は、現在、早稲田大学で講座を持たせてもらい、1年生から4年生までの全学部横断で「コミュニケーション」を教えています。彼らの受講動機で多いのは、「人前で話すのが苦手だから、それを払拭したい。面白い話しができるようになりたい」というもの。みな口をそろえて訴えます。そういう彼らに私がいつも強調するのは、「TPOを考慮しながらも、ユーモアを持って話せるマインドを心がけろ」ということです。
ユーモアを持って話すことによって、相手の表情を緩める。相手との距離を縮める。
ところが、これが日本人は苦手です。
何故苦手なのか、
もともと歴史的に「書き言葉」重視の日本では、「話し言葉」へのある種の侮蔑感(沈黙は金、雄弁は銀、一を聞いて十を知れ、などなど)があるため、欧米と違って、文科省の話し言葉教育が著しく遅れています。
つまり、読む、書く、は得意でも、話す、聞くは、多くの日本人が不得意です。学校で教わってこなかったんです。
欧米先進国の放送メディアには、日本のように「アナウンサー」という職能がないことが、如実にそれを示しています。
みんな話がうまいから、わざわざアナウンサーなんて仕事はいらないのです。
何も、論理的に話さなくていいんです。ユーモアの「マインド」でいいんです。笑わせようという「やさしさの姿勢」を持つことが大切です。
それが、人間関係の潤滑油。
随分昔の話になりますが、私が今でも強烈に記憶に残っている「世界的事件」を紹介しましょう。
1992年1月、東京での日米首脳会談の時でした。
この時、首相官邸で晩餐会に臨んだパパ・ブッシュ大統領が突然、宮澤喜一首相の膝元に倒れてしまうという大事件が起きたのです。
この時、同席したバーバラ夫人が、夫の容態が大したことはないとみるや、すかさずこう言いました。
「大統領は、昼間、天皇陛下とテニスをしたのですが、実は、大統領とアマコスト駐日大使のペアは、天皇、皇太子ペアに負けました。そのアマコスト大使のせいで、大統領は倒れたのです。アマコストがミスをして試合に負け、大統領は悔しさとショックのあまり倒れてしまったのです」
その上質なユーモアに、集まった外国人記者を含め会場は大爆笑、みんな感心しました。夫が倒れた一大事なのに、ユーモアでその不安を払拭する。
心配事を笑いに変えてしまうそのスピーチの力。私は、バーバラ夫人の人間の大きさに驚かされました。
そして、これに答えて宮沢首相も日本語でスピーチをしました。
同時通訳されていましたが、日本の記者と外国人記者の間にはタイムラグが生じることになります。宮沢首相のスピーチはこんなものでした。
「私は、1940年代に米国留学していたのですが、そこで自分の人生にプラスになったことが2つありました。1つは、本当の自由というものを学んだことです。そしてもう一つは、私の妻と出会ったことです」日本語で宮沢首相が話したのに、日本人記者の間から笑いは一切起こりませんでした。
ところが、通訳が終わったあと、外国人記者がドッと笑い、首相にも拍手を送ったのです。
つまり、バーバラ夫人や宮沢首相のユーモアは、日本人には通じなかったのです。いや、少しは通じていたかもしれませんが、日本人はここで笑ってはいけないと思ったのかもしれない。この両者の違いは何だろう。
それは、相手に対する「眼差し」の温かさの違い、お互いの気持ちを共鳴させようという努力の違い、笑うという行動に対する価値観の違い。なんですね。
日本人は、お笑い芸人の笑いは好きだけど、日常生活の笑いは足りない、少ない、しかも。それでいいと思っている。
だから、いつまでも本音と建て前を使い分け、他人との距離がなかなか縮まらない。
たかが笑い、されど笑い、です。
そう思えるのです。
すこし、大げさな話になってしまいましたが・・・・・
54ら会は、ユーモアある人々がたくさんいます。上質かどうかは別として(笑)すくなくとも、そのマインドが溢れている人たちの集まりだと思います。
だから、第二の青い春の時代は、大いに笑いあう時間を増やしたいのです。
笑いは、何よりのアンチエイジングでもありますからね
(桜井会長から、原稿を書けと指令を受けて、締め切り直前あわてて書きました、学生のリポートみたいに長くなってしまいました。あしからず)